forever41

とあるマブスファンが優勝のために考察するブログ

カーライルとの思い出

 朝起きたらカーライルはマブスのヘッドコーチではなくなっていました。プレーオフ敗退直後はまだチームにいるようなことを示唆するコメントを出していただけに、この決断にはかなりショックです。多くのマブスファンにとってマブスのコーチはずっとカーライルだったんじゃないでしょうか。僕は2013-14シーズンから見始めたので、残念ながら優勝した時の思い出を語ることはできませんが、今回は個人的なカーライルの思い出を振り返っていきます。
 

 

 

2013-15 モンテ・エリス時代

f:id:forever41:20210618162023j:plain 

 僕がマブスを見始めたシーズンが2013-14シーズン、ノビツキーのファイナルのハイライトきっかけで興味をもった初めて見たマブス戦で、ノビツキー以上に興味を惹かれた選手、それがモンテ・エリスでした。モンテ・エリスと言えば、カリーとの不仲でバックスにトレードされ、その後カリーとウォリアーズが王朝を築いていったことから、一般的には失敗した選手として扱われがちです。しかしマブスでの2年間ではエースとして非常に効果的な働きをしてくれました。それも彼のスタイルがカーライルのオフェンスシステムと合っていたからだったと思います。この年のもう一人の先発バックコートはホセ・カルデロンであり、彼とエリスの二人のテンポのいいバランスアタックは、カーライルの代名詞とも呼べるオフェンスでした。決して傍から見れば強力なロスターとは言えませんでしたが、それでも一回戦でその年優勝するスパーズと7戦まで縺れる死闘を繰り広げたことは、マブスとカーライルの評価が改めて上がった年になったのではないでしょうか。

 次の2014-15シーズン、昨プレーオフでのスパーズへの健闘から、チャンドラー×2やジャミーア・ネルソンなどの選手を獲得し、オフの積極的な補強に成功しました。開幕してすぐに2011年優勝の立役者であるバレアも取り戻し、開幕当初はウォリアーズと並んでリーグ屈指のオフェンス力を誇ってました。更に優勝を目指すための補強として、セルティックスからレイジョン・ロンドをトレードで獲得。しかしこれが後にカーライルとの衝突、そしてチームの勢いの失速につながったのは周知の事実です。これは後にドンチッチとの関係についてのところでも触れますが、カーライルはボールを長く持ってプレイメークするタイプのPGとは馬が合わない傾向にあるんじゃないかと思います。ロンドという偉大なポイントガードが加入したものの、複数のボールハンドラーが主体のカーライルのオフェンスとは合わずに、自慢のオフェンス力もトレード前に比べて段々と落ちていってしましました。

 そんな良くない印象のあるシーズンでしたが、プレーオフで孤軍奮闘したのもまたエリス。1-4でロケッツに惨敗したシリーズでしたが、そんな中でも平均26.0点5.2アシストとマブスを引っ張ったエリス。その後移籍したペイサーズでは活躍できず、NBAから姿を消してしまったこともあり、キャリアの中で一番勝ちに貢献した時期でもあったということからも、カーライル×モンテ・エリスのバスケをもっと見たかったなー、と思いますね。

 

 

 

2015-16 絶望からのサプライズ

f:id:forever41:20210618165756j:plain

 プレーオフでの惨敗を踏まえて戦犯扱いされていたロンドの放出、そして未来のチームの柱としてデアンドレジョーダンを獲得しようとしました。しかしなんだかんだごたごたがあってデアンドレクリッパーズに残留、デアンドレが来る前提で獲得できるはずだったジェレミーリンはホーネッツに、デアンドレ獲得報道で失望したタイソンチャンドラーはサンズに移籍してしまいました。そして僕が一番悲しかったのが、過去2シーズンチームのエースとして引っ張ってくれた    モンテエリスがペイサーズに去って行ってしまったことです。個人的にマブスでトップ3に入るくらい好きな選手だったので、この移籍はほんとに落ち込みましたね。結果として誰も残らなかったロスターは過去3年間の中でも最弱であり、シーズン開幕前、マブスプレーオフ予想する人はほとんどいませんでした。しかしシーズンが始まってみると5割以上の勝率をキープし、大方の予想を裏切って第6シードでプレーオフに進出します。このシーズンはカーライル色全開なチームで、バレア、デロン・ウィリアムズ、デビン・ハリス、レイモンド・フェルトンらのスモールガードを二人、もしくは三人同時起用したり、パウエル、メジリ、パチュリアというなかなか癖のあるビッグマンを使い分けたりと、ほかのコーチだったらお手上げ状態になりそうなロスターを上手く使いこなしていました。改めて自分がカーライルのバスケが好きなんだな、と感じたシーズンでした。

 

 

2016-18  暗黒期

f:id:forever41:20210618181529j:plain

 ハリソン・バーンズ時代とも呼べるこの時代。開幕直後から大きな連敗を喫し、そのままの流れで負け越しが続いたこの2シーズン。 しかしこんなどん底なシーズンでも、セス・カリー、ドリアン、ヨギ、クリバーなど誰も目を付けない選手に役割を与えて活躍させていました。これはどちらかというとGMの手腕に見えますが、エリス、デロン、バレア、セスなど、マブスで活躍するプレーヤーが攻撃的なガードに多いことは、カーライルが彼らのような選手を使いこなすのが抜群に上手いからと言っていいのではないでしょうか。

2018-21  ドンチッチ時代

f:id:forever41:20210618181656j:plain

 2018年ドラフトでマブスはユーロの至宝でありNBAの未来であるルカ・ドンチッチを獲得。シーズン開幕からオールスターまではメインボールハンドラーではあるものの、まだデニス・スミスJrやバーンズらとボールシェアをしていたドンチッチ。しかしトレードデッドラインでの主力の大量放出により、それ以降のシーズンのマブスはスタメンはドンチッチ一人がハンドラーの超ドンチッチ中心のチームとなっていきます。今までカーライルの十八番だったダブルハンドラー体制が崩れたことで、この辺から「これは本当にカーライルがやりたいバスケじゃないんだろうなー」と思っていました。そういう意味ではバレア+ハリスや、JB+セスなど、むしろベンチユニットのほうがカーライル色が出ていて、スタメンとはオフェンスのリズムを変えるという点でもいい使い分けだったんじゃないかと思います。

 

f:id:forever41:20210618181945j:plain

 個人的なカーライルの思い出を振り返ってきましたが、個人的にはプレーオフ敗退後、チームを向上するためにはカーライルかポルジンギス、どちらかを変える必要があると考えていました。正直ドンチッチ中心になってから、カーライルの本来の良さが出ていない感じもしたので、辞めるのは時間の問題だと思っていたのです。ですから本来ならばこの交代は寂しいけれどするべき決断と捉えるべきものでした。しかし最近の情報筋によって明かされたマブス内のゴタゴタ、前日のGMドニーネルソンの解任を考えると、カーライルの辞任はどうしても「前向きなお別れ」ではなく「沈みゆく船からの脱出」のように見えてきてしまいます。今はなかなかポジティブな気持ちになりにくい決別になってしまいましたが、数年後に「あの決断はマブスにとって正しかった」と言えるように願うばかりです。 

 

 最後に、カーライルのチームへの貢献は我々の目に見えない所にもあったようです。長年マブスの実況をつとめるマーク・フォローウィルは今朝こんなツイートをしました。

 このツイートによると、カーライルは他のチームではやらないような、マブスの放送関係者のためにシュートアラウンドを開いたり、アウェーではフォローウィルや実況解説のチャック・クーパースタインたちと共に食事をして、現役時代の思い出話を語ったりするなど、僕たちの見えない所で選手だけでなくマブスの関係者たちと良好な関係を気づいていたのがカーライルでした。我々ファンはコート上で起こることだけでしか、そのコーチの善し悪しを判断できませんが、このようなオフコートでの貢献などを考えると、コーチの評価というのは改めて難しいなと感じます。

 僕らマブスファンはツイッター上ではカーライルに対して文句は言うこともありましたし、イライラさせられることもありました。カーライルの退任はチームが更に上を目指すうえでポジティブな変化だと捉えるべきでしょう。しかしノビツキーの時代からドンチッチ時代まで、目まぐるしく変わる現代NBAの中で、13年間もの間コーチを続けられたのは、彼の対応力とキューバンとの信頼関係があったからに他ならず、最大限に評価されるべきだと思います。オンコート・オフコート共にどれだけマブスに貢献してきたかは計り知れません。戦術家で、頑固で、しかめ面で、娘とノリノリでダンスしちゃったりして、たまに笑うと見てるこっちが嬉しくなる、そんな愛すべきハゲ、リック・カーライル。

 

13年間本当にお疲れさまでした。次にマブスとやるときは手加減してね。

 

f:id:forever41:20210618170456j:plain