forever41

とあるマブスファンが優勝のために考察するブログ

2023-24前半戦振り返り:ルカイリー体制本格始動

 

 

 こんにちはTKです。気づけばマブスの今シーズンの半分を過ぎてしまいました。今年はルカイリー体制でシーズンを始められる初めてのシーズンであり、それに伴って大きな変化も見られました。そこで今回はこれまでの戦いぶりを振り返り、大変恐縮ながら最後に改善案を提案したいと思います。

※スタッツは特別な記載がない限り2024/1/22時点のものです。

 

1章:全体の傾向

2022-23→2023-24

OFFrtg:115.9(6位)→117.5(8位)

DFFrtg:116.1(25位)→116.5(20位)

 数字だけ見るとOFFは改善、DFFはほぼ現状維持って感じですね。なんですが、今シーズンはリーグ全体のOFFrtgが1.0近く上がっているので、リーグ全体の順位的にはそれが逆転しているという不思議なことが起こっています。

 

2章:オフェンスについて

2.1:ペースアップの成功

始めに注目すべきは、オフェンスでのペースアップです。

ペース:97.21(28位)→100.81(9位)

速攻からの得点数:17.7(28位)→23.0(10位)

速攻からの得点効率:1.11(23位)→1.20(4位)

ペースのランキングでここまで高い順位に来るのはドンチッチデビュー以来初。昨シーズンのカイリートレード後から少しずつあったこの傾向が、今シーズンはチームに浸透しつつあります。

 また、得点効率においても注目すべき変化があります。トランジションオフェンスの効率1.11から1.20への向上は、リーグ内で4位にランクインするまでに至りました。このペースアップによる変化は今シーズンのオフェンスの一番重要な要素となっています。むしろ得点効率的にはもっとポゼッションを増やしてもいえるような立派な成績です。

 この成功の理由は、トランジションに向いている選手たちが多く在籍していることにあります。カイリー、エグザム、ハーディなど、ボールをプッシュできる選手や、ランニングする選手としてグリーン、THJ、DJJ、ライブリーなどが挙げられます。

 ルカ・カイリーといった強力なハンドラーが二人もいることから、ハーフコートでは重たい展開になりがちな中、オープンコートで戦う時間を増やすことで、試合トータルでのオフェンス力を底上げする効果的な戦略となっています。これをシーズン半分経過しても継続できているのは、ひょっとするとキッドの最大にして唯一の功績かもしれません。

 

2.2:チームと逆行するドンチッチの特性

 

 じゃあそんなチームにおいて我らが大将・ドンチッチがどのような影響を与えているのでしょうか。彼のon-off時のアシスト率とペースの変化を見てみましょう。

AST%:ON→55.6% OFF→65.6%

ペース:ON→101.02 OFF→103.07    

驚くべきことに、ルカがいる時のチームのアシスト率は約10%近くも下がり、ペースも大きく落ちていることが明らかになりました。これは今シーズンのオフェンスの傾向とは逆行するものであり、マブスにおける新たな課題と言えるでしょう。ただ、ルカはルカで、昨シーズンより自分でリバウンドを取ってからのアウトレットパスを意識して増やしているように見えるので、一概に彼がペースアップに適応していないわけではありません。

 また、ルカのon-off時のネットレーティングの差が去年よりも少ないことも注目すべきポイントです。

2022-23:+5.5 → 2023-24:+1.7

これは今シーズンはルカに依存しなくても、チームがプレーを構築できていることを示しています。

 比較として挙げたいのが、ヨキッチの例です。ヨキッチは+18.5のネットレーティングを誇りながら、プレータイムは33.5分です。いるのといないのでこれだけ影響力が変わる選手を、これだけのプレータイムで抑えながら勝てているということで、ナゲッツの方が長い戦いを見据えた戦い方ができていると言えるでしょう。

 

提案①: ルカの出場時間を調整しよう

 この情報から導かれる提案として、ルカの出場時間を今より抑えることが挙げられます。目安としては33.5~35分とし、チーム全体のバランスを保ちながらも、ルカによる依存を軽減し、長期的な戦いに備えた戦略的なプレーを目指したいところですね。

2.3:摩訶不思議なドンチッチのシュート効率

 この流れだとルカがこのチームに悪影響しか与えない存在みたいになってきているので、そもそもルカ・ドンチッチとはどういう選手かというのを、同じくリーグトップクラスのPGであるカイリーと比較しながら見ていきましょう。

2人のシュート効率(eFG%)をドリブル数別にまとめたものがこちらです。

カイリーはドリブルなしのシュートの割合も割と多めですね。確率に関しては、ドリブル数と成功率が反比例する、いわば優等生なスタッツです。

 それに対してドンチッチはなんともいびつな数字をしています。一番成功率が高いのがドリブルなしなのは同じとして、次に確率が高いのがドリブルを3~6回もついてからのシュートというのは驚き。そしてこのeFGですが、61.2%と、なんとリーグ1位の効率の良さ。しかもダントツの、です。正直僕は常々、ドンチッチが長くボールを持つたびに「うーん」となっていましたが、長く持つことでここまで効率が良いシュートを打てているのなら話は別。彼自身のリズムを作ることの重要性を考えれば、寧ろ推奨すべきでしょう。

2.4 プレー選択の比率を考えよう

 そんな異次元なルカですが、彼に注文を付けるとしたらプレー選択の比率を改善してほしい、ということです。下のグラフはドンチッチのアイソレーションとピック&ロールのハンドラーの得点数の比較です。

 これを見ると、年々アイソレーションが増え、ピック&ロールの割合が減っていることが分かります。これはキッドになってから、スモールセンターを起用した5outが増え、インサイドのスペースを空けてハンドラーのアイソアタックをメインにする傾向が強まったからでしょう。ただ個人的には以下の理由からアイソをメインのオフェンス戦術に据えるべきではないと考えています。

 

①上振れ値が少ないオフェンスである

 ドンチッチのアイソは単体で見れば期待値の高いオフェンスではありますが、一方でそれ以外のイージーシュートが生まれにくいのも事実。あるとしたらヘルプに来た際のオープンスリーくらいか。一方ピック&ロールだと、そこにロールマンのアリウープの選択肢が増えます。全盛期ウォリアーズだったらカリーが動きまくっているだけで、勝手にオープンなゴール下が生まれたりと、メインに狙いたいプレーから派生して、サブのイージーシュートが期待できます。上振れの要素が少ないオフェンスを今のマブスが選択すべきかは疑問です。

 

②上振れの無さをディフェンスでカバーできない

 ①を語るうえで重要なのは、マブスはディフェンスがいいチームではないということです。ディフェンスで安定感をもたらせるチームであるのならば、オフェンスに上振れ値を見出す必要性は薄くなります。しかしマブスはそうではありません。だからこそ「ドンチッチの調子の悪い試合は負け」という現状の単純かつ不健全な構造を崩すために、アイソレーションへの依存度を下げるべきだと考えます。

 

③特定の選手への負担が大きすぎて、長期戦に向かない

 ハンドラーだけに負担が偏って周りは棒立ち、という展開になりがちで、選手に蓄積する疲労のバランスが良くない。結果として一番個の打開力が求められるPOでドンチッチ本来の力を維持できず、長く勝ち上がることができない、という展開が目に浮かびます。

 

④ドンチッチが実力を過信しすぎる

 アイソアタックの期待値を上げる最も一般的な手段としては、相手の弱いディフェンダーへスイッチさせることがありますが、ドンチッチはそれすら狙わず無策にアイソを仕掛ける時が無視できないくらいにはあります。アイソをメインにオフェンスを組み立てるということは、それだけ彼の無秩序なシュートが生まれるということで、安定感はなくなります。

提案②:ドンチッチのピック&ロールの割合を増やそう

ということで、アイソとピック&ロールに関しては、最低でもカーライル時代位の割合に戻してほしいという気持ちです。そう言いたくなるのはライブリーの存在です。ここまでサイズとアスレチック能力と献身性を兼ね備えたビッグマンはドンチッチデビュー以来初です。彼の出場時間は明白であり、その時間を有効活用するためにも、ライブリーとのピック&ロールはもっともっとしつこくやって欲しいと思います。

 

3章:ディフェンスについて

 

続いてディフェンス。これについては上手くいっていない原因は明確です。

・制限エリア内の被FG%:70.8%(29位)

・被ペイント内得点:53.3(23位)

・被速攻得点:16.6(28位)    ※2024/1/23時点

 一番優先的に守るべきペイントエリアが一番守れていないんだから、そりゃディフェンスもダメですよねって話です。

 ここで重要なのが、相手に打たせるシュートに対する整理です。基本オフェンス有利な現代NBAにおいて、ディフェンスする際にどのシュートなら打たせて良くて、どのシュートは打たせちゃいけないかの取捨選択が重要です。マブスがこれをできているのか見てみましょう。

opponent shootingをエリア別で割合を示したもの。赤→多 緑→少

これはディフェンスにおいてどのエリアでシュートを打たれているかを色分けして示したものです。ディフェンス1位のウルブズや2位のセルティックスは優先すべきゴール下やコーナースリーをきっちり打たれないようにしています。流石ですね。

 じゃあマブスはどうかというと、全体的に色が薄いですね。これはすなわち取捨選択ができていない証拠だと思います。実は似たような分布だとディフェンス5位のマジックがいるのですが、マジックはもともとディフェンスに寄った人材を多く集めているので成立しているんじゃないかと予想しています。対するマブスはそうではありません。ならば理想は捨て、せめてこの取捨選択をハッキリするところから始めるべきではないでしょうか。

 また、試合を見ていると、相手のハンティングに対するスイッチの有無や速攻に対するセーフティの位置取りなどの細かな整理ができていないように感じます。上記の取捨選択にしてもそうですが、総じてディフェンス全体の整理がチームとしてできているようには思えません。

提案③:打たせるシュートの取捨選択をハッキリさせよう

 

3.2:スモールセンターへの固執(n回目)

次は個々のDFFrtgを見ていきましょう。DFFrtgのon-offの差が一番特に大きいのがこの3人

ルカ:5.0 グラント:6.1 THJ:6.5

 ルカとTHJはシンプルな努力不足が目立つし、ボールサイドに寄り過ぎてオフボールディフェンスで何も見てない場面が多すぎます。僕がTHJがどんなにオフェンスで活躍しようが絶対にトレードすべきだと思う理由はこれ。オフボールでマークマン見失う人が二人もいるチームでは絶対にディフェンスの向上は望めません。

 グラントのディフェンスにおける問題は、スモールボールでのセンター起用が一番の問題の原因でしょう。グラントのディフェンスにおける特徴については、下のツイートを見ていただきたいです。

 

 要は短い時間なら相手センターにもマッチアップできるが、試合通してセンター起用するのがダメだということです。彼自身がリバウンドにとりわけ強い選手ではないので、センター起用するなら、周りにサイズのあるウィングを複数人揃えないとダメだと思ています。そうでなければきちんとセンターの横に並べるべきでしょう。現にNETrtgで見ると散々なグラントですが、ライブリー、ホームズと同時起用されているときはプラスになっています。

 また、マブスのスモールの何がダメって、センターが小さいだけならまだしも、周りのウィング陣とガード含めて小さいということマブスの選手のサイズ見れば一目瞭然なんですが、メインでローテに入ってるメンバーの中で6-7から6-9のサイズがあるウィングがいないんですよね。ロスターにはOMAXがいるけど使われないし。その割にやることはドンチッチのアイソ主体でガード同士の絡みが少ないから、スモールであるメリットが全く見いだせていません。グラントのレーティングを見ても分かるように、明確に数字として失敗しているんだから、少なくとももっと短い時間に留めるべきでしょう。センターのローテーションに関しては、ライブリー30分+パウエル18分で、相手によってはグラントが数分。こんな感じでどうでしょうか。(現実はクリバーセンターでパウエルは干される)

提案④:グラントはセンターと併用しよう

 

 

4章:選手起用について

4.1:定まらないローテーション

※2024/1/23時点


 ここからは選手起用について深掘りしていきましょう。今シーズンのマブスは同じ5人のラインナップで、100分以上出場しているものが未だにありません。一番多いラインナップがギリギリ100分くらいですが、その下のラインナップを見るとまばらに見えます。確かに怪我人が多いシーズンではありますが、主力が2人も離脱したキャブスや途中で大きくスタメンを変えたジャズもこの条件をクリアしていることを考えると、言い訳できない感じはします。不安定なローテーションは、どの組み合わせが一番相乗効果があるかをシーズン半分通して見出せていないのは、不安定なチーム状況の一因になっていると思います。

4.2:ルカ・カイリー相性表

 リーグトップクラスのガードを2人も抱えているので、周りの選手たちは彼らの志向するオフェンスとの相性の良さがカギになってきます。下の表はカイリーとルカ、どっちといる時の方がNETRTGが高いかを比べたもので、どのような特徴を持つ選手が相性がいいのかが見えてきます。

 ほとんど数字に違いはないグラントとライブリー、そもそものNETrtgが高すぎるエグザムは相性の差はあまりないように見えます。

 ルカとの相性がいいのはDJJですね。DJJはルカのドライブ→キックアウトしてからのスリーorカウンタードライブが主な得点源であり、またルカが高めの位置でダブルチームを仕掛けられた際の中継役となり、4 vs3の状況で果敢にドライブからねじ込める力強さもあります。半面、ズレのない所からプレーを作るのは苦手なので、満遍なくパスを捌くカイリーより、ズレをしっかり作ってからパスをくれるルカの方が相性がいいのでしょう。

 一方カイリーの方が相性のいい選手はTHJ、グリーン、ハーディ、パウエルですね。THJ、グリーン、ハーディは早い展開に持っていけるカイリーといる時の方がリズム良くシュートまで持ち込めているように思えます。グリーンとハーディはある程度ボールを持ってからの判断力があるため、ドンチッチと比べてよりボールを散らしてくれるカイリーといる時間の方がボールを自由に扱う時間が多いです。また、一番レーティングに差が大きいパウエルですが、これはカイリーとのパス交換の多さにあると思います。

ルカ欠場中の試合では、トップのパウエルにボールを預けてから、THJとカイリーのオフボールスクリーンからカッティングやオープンスリーを狙うプレーもありました。

こうしてみると全体の傾向として、周りの選手の判断力をより信頼したプレー選択が多いです。

 

提案⑤:ルカイリーとの相性を見極めたラインナップ起用を増やそう

 これらを踏まえて、ルカ・カイリーと相性のいいラインナップを考えると、

ルカ

スポットアップのフィニッシュ力重視かつディフェンシブなラインナップ

カイリー

判断力に優れた複数人とボールをシェアする、アップテンポなラインナップ

このようになると思います。後はこのように相性のいいラインナップを増やすためのコーチ陣のプレータイムの管理がカギになってきそうですね。頑張れキッド(白目)。

 

5章:まとめ

提案①: ルカの出場時間の調整

提案②:ドンチッチのピック&ロールの割合を増やそう

提案③:打たせるシュートの取捨選択をハッキリさせよう

提案④:グラントはセンターと併用しよう

提案⑤:ルカイリーとの相性を見極めたラインナップ起用を増やそう

 

 

ジョシュ・グリーンの来季のスタッツを予想しよう

The Rise of Josh Green Couldn't Come at Better Time for Dallas Mavs -  Sports Illustrated Dallas Mavericks News, Analysis and More    「サディック・ベイを取っていれば…」「デスモンド・ベインが取れたはずなのに…」2020年にドラフトされて以降、常に同期と比べられ「期待外れ」の烙印を押されてきた男は、昨シーズン大きな飛躍を遂げました。過去2シーズンで指摘された積極性の無さ、外のシュートの成功率の低さを、今シーズンは大きく改善させてくれました。

 彼がスリー&Dとしてチームに貢献できることは証明されました。しかし来季チームがさらに上昇するためには、若くて才能のある彼に今季以上に活躍してもらう必要があります。今のチームの抱える問題を解決するためには、シーズン中に時折見せた才能溢れるプレーを安定して発揮してもらうことが必要です。今回は、現状の彼の役割、能力を分析して来季彼に求めるものを明確にしていきたと思います。

 

2章:なぜ成長が必要なのか

 ズバリ、彼にはチーム3番手の選手としての地位を確立してほしいのです。今オフのほとんどの獲得した選手共通しているのは、ディフェンス面で期待されているということです。逆にディフェンス面での粗さが目立ったウッドは再契約されず、同じく粗さの目立つTHJもオフシーズン中に常にトレードの噂があるなど、明らかにチームの方針はディフェンスに寄ってきています。

 仮にウッド、THJどちらもいなくなった場合、昨季チームのルカ・カイリーに次ぐ得点源だった2人がいなくなった分を、ある程度既存の戦力で補完する存在が必要となってきます。その存在になりうるのが、今回の主役・グリーンなのです。

 昨季序盤は3P成功率で1位を独走し、守備では持ち前の献身性と運動量を活かして貢献し、3&Dとしての役割を確立しつつあるグリーンですが、好調なときに見せるプレーには、単なる3&Dには収まらないポテンシャルを感じさせられます。そのポテンシャルが真の実力としてあらわすことができれば、彼は3番手としての地位を確立することができるでしょう。

 

3章:現状分析…彼のスキルセットについて

 グリーンのオフェンス・ディフェンス両面での特徴を確かめていきます。ちょうどいいサイトがあったので、それを見てみましょう。

https://craftednba.com/players/josh-green

オフェンスでどのプレーを選択するかのグラフと、ディフェンスでどのポジションにマッチアップするかについてのグラフです。これを基にグリーンの特徴を考えると、

オフェンス:スポットアップシューター(たまにハンドラー)

ディフェンス:相手のガードに対するロックダウンディフェンダー

ざっくりこうなります。オフェンス時の役割はウィングなのに、ディフェンス時ではハンドラーにマッチアップするというのがちょっと特徴的ですね。また、好調時に魅せるパススキルは、現状スタッツ上ではそこまで見えてこないので、これがハッキリと数字に表れるようになることが来季の目標といえるでしょう。

 また、さらに細かくスタッツを見てみましょう。いくつかのスタッツには、彼の運動能力の高さが攻守に表れています

ディフェンス時の平均速度:4.32(リーグ2位

制限エリア内のFG%:71.7(ガード10位

※出場試合数30試合以上の選手が対象

速攻時に先頭を切って走る姿勢や、ドライブ時の力強いフィニッシュが近距離での成功率の高さを支えています。また、ディフェンス面ではリーグトップクラスに速く動いており、スピードのある相手にも負けないところが素晴らしいです。これらを踏まえてグリーンに身に着けてほしい能力を分析していきましょう。

 

1.サイズのある相手にもディフェンスできる

 グリーンの意外な弱点として、「いいディフェンダーではあるけどマルチポジション守れるわけではない」ということがあります。196㎝という身長は、ウィングの選手としては決して大きいとは言えません。ポジション別にディフェンススタッツを見てみると、その弊害が大きく表れていることが分かります。

グリーンのポジション別被FG%

ガード:43.8% フォワード:57.9%

ガード相手とフォワード相手とで14%近くも被成功率に差が出てしまっています。マブスというチームが2人のガードがエースのチームであることを考えると、グリーンにはポジション関係なく幅広い体格の相手にディフェンスすることを期待したいところです。

 しかし身長が低い=守れないとは必ずしも言えません。リーグの中には、身長がなくてもサイズのある相手に対抗できる選手もいます。そしてその貴重な選手の一人が、今オフマブスに加入したグラントウィリアムズです。

www.youtube.com

198㎝ながら一番多く守っているのはセンターという異色のディフェンダーの加入は、チーム全体の守備という観点だけでなく、グリーンの成長という意味でも大きな意味があると思います。グラントのような体格を身に着けるのもそうですし、彼のクレバーな部分を盗むことで、グリーンのディフェンス面での成長が加速することが期待されます。

 

2.安定した中距離シュートを身に着ける

 昨シーズン好調の際は、持ち前のフィジカルを活かしたドライブとそこからのパスが光りました。しかしその一方で、その強みを分かっている相手に対しては、ドライブ後に相手にゴール下を固められて、フィニッシュまで持って行けない展開もよく見受けられました。

 

グリーンへのスカウティングが進み、このような守り方をされるようになると、彼の身体能力を最大限生かすことができなくなってしまいます。

これを解決するためには、

①混みあったゴール下でも決めきれる圧倒的なフィニッシュ力

②空いた中間地点からの確実なシュート力

このどちらかが必要になってきます。①に関しては、グリーンはフィニッシュパターンが豊富なわけでも身長があるわけでもないため、これ以上を期待するのは難しいです。②に関しては、調子の良いときにはタフな体勢からミドルレンジシュートを決めていたので、その辺のシュートセンスは備わっていると思います。


www.youtube.com

(↑シュートセンスが爆発した試合)

よって、②を強化すべきだと考えます。こうすることで、

1.スリーを警戒してクローズアウトしてくる相手にカウンタードライブ→ゴール下を警戒して下がって守るヘルプに対してオープンな中距離シュートを成功

2.中距離を無視できない相手に高めの位置からのヘルプを強要→パスセンスが活きる

このように流れが生まれることが予想できます。グリーンに対してコート上での警戒すべき場所が増えることで、もともと持っていた強みをより強く発揮できるようになり、プレー全体の質が上がっていく、という好循環が生まれれば最高ですね。

www.youtube.com

 

4章:具体的な目標スタッツ

 これらを踏まえて、実際に何本くらいシュートやアシストが増えてほしいのか考えていきましょう。具体的な数字を求めるにあたって参考となりそうな他チームの選手を何人かピックアップしてみました。

 

1.ノーマンパウエル

 ハンドラーにしてはプレーメイク力不足、ウィングにしてはサイズに乏しい、そして2巡目46位指名からスタートというハンデを持ちながらも、安定して平均17点前後を稼ぎ続けるパウエル。力強いドライブアンダーサイズながらも63.6%決めれるフィニッシュ力がありますが、ゴール下まで行き切れない場合もミドルを打てるのが強みです。強力なハンドラーがいる場合もオフボールからシュートまで持っていく選択肢があるので、マブスにいるグリーンも参考にできるところがあると思います。


www.youtube.com

 

2.ブルースブラウン

 少しディフェンシブな選手で考えてみましょう。同じくウィングにしては少しサイズ不足ながらも、こちらはそのハンデがあってもなお、ディフェンス面で活躍しています。サイズがなくても相手のフォワードエースまできちんと守れるところは、グリーンも真似したいところです。

 また、スタッツを見て気づいたのは、使われる側がほとんどだという思い込みがあったブラウンが、思ったよりハンドラーとして活躍する割合が多いということです。

ハンドラーの役割がグリーンより多く、ディフェンスポジションはグリーンと近い

ブラウンのナゲッツ内での役割は、ヨキッチ、マレーというメインでボールを扱う選手がいる中での、あくまでオプションとしてのハンドラーです。ですので同じくボールを長く持つルカ、カイリーがいるグリーンにとって、「このくらいの頻度でハンドラー役をこなしてほしい」という指標として、ブラウンはかなり適しているのではないかと思います。

 

3.ドリアン・フィニースミス

 我らがディフェンスエースの役割をグリーンがそのまま受け継げると理想です。平均出場時間やスリーの試投数はドリアンと同じくらいになってくれることを期待したいので、それらの予想はマブス在籍時のドリアンのスタッツを参考にします。

 

この3人を参考にして、来季のグリーンの具体的なスタッツを予想していきましょう。 

 

中距離シュート(制限エリア外のペイント内~ミドルレンジ)の本数/確率

 昨季のパウエルは、このシュートを平均3.4本打っています。グリーンは昨季このエリアで50%近く決めているので、試投数増えて多少確率落ちることを加味すると、

0.7/1.3/50.7%→1.6/3.5/45.7%

(※成功数/試投数/成功率 昨季→来季)

とかになって欲しいですね。

 

アシスト数

 昨季のブラウンは平均3.4本。グリーンがスタメンで出場し、ナゲッツ時代のブラウンより出場時間が増えることを考えると、

1.7→3.6

と予想します。

スリーポイント試投数/確率

 2021-22シーズンのドリアンのスタッツを参考にすると、平均5.4本のスリーを打っています。これと同じ本数で、昨季のグリーンの確率を考慮すると、

1.1/2.8/40.2%→2.1/5.4/38.9%

とかですかね?本数は増えますが、その分確率は微減すると予想します。

相手フォワードの被FG%

 サイズでグリーンに劣るブラウンが47.9%記録していることを考えると、グリーンもそれに近い数字を期待してしまいます。理想と現時点での彼の実力を考慮して

57.9%→49.0%

と予想します。並み以上に止められるようになれば及第点でしょう。

その他のスタッツ

 出場時間の増加に伴ってゴール下のシュート数とリバウンド数、フリースローは微増と予想。フリースローの確率に関しては地味に弱点。現状72%とかなので、ドライブが強みの選手としては、細かい差ですが最低でも75%くらいは決めてほしいところですね。

 

これらの細かいスタッツを踏まえて平均得点とFG%を計算した結果が以下の表の通りです。

  成功数 試投数 成功率
ゴール下 2.1 3.0 70.0
中距離 1.6 3.5 45.7
3P 2.1 5.4 38.9
FT 1.5 2.0 75.0
総得点 15.2    
FG%     48.7

 

ということで、グリーンの来季の予想スタッツは

得点/リバウンド/アシスト:15.2/4.0/3.6 

FG%/3P%/FT%:48.7%/38.5%/75.0%

このようになりました!こんだけやってくれれば万々歳ですね。まあこれは参考にした各選手のいいとこ取りした、めちゃくちゃ都合のいいスタッツなので、現実味があるかと言われれば疑問かもしれません。ただグリーンにはそれだけ期待してるし、実際にこうやって細かい部分まで数字を示すことで、どの部分がどれくらい成長したか、我々ファンの視点からも評価できるようになると思います。なんてったってオフシーズンのいいところは、好き勝手期待し、おいしいシチュエーションばかり妄想できることですから(笑)。来シーズンのMIPをグリーンが満票で受賞するところまでバッチリイメージできたところで、この記事を終わりたいと思います。


www.youtube.com

 

 

 

誤算の舞台裏:マブス転落の真相

 

 

 こんにちは。長かった2022-23シーズンはナゲッツの優勝で幕を閉じましたね。同じコーチの下、自チームでドラフトした選手を中心に長い年月をかけてついに優勝を果たしたことに素直に感動しました。スモールマーケットのチームでも地道にチームを育て上げればここまでこれるということを教えてくれた、素晴らしいチームでしたね。

 さて、そんな夢のような素晴らしいチームを見た後に、クソみたいな現実に引き戻してくれるチームが、我らがダラス・マーベリックスですね。見ている人全てを混乱させ、その混乱のままあっけなく終わってしまった今シーズン。そんなシーズンを時間が経った今、冷静に振り返ってみて、何がいけなかったのか、重箱の隅をつつき過ぎで穴が開くくらいの勢いで精査していきましょう。

 

※この記事ではレーティングやPPPといったスタッツに関する用語が沢山出てきます。なるべくその意味が分からなくても伝わるように書いてますが、分からないものは是非調べながら見ていただけるとありがたいです。

 

1章:躍進からのステップバック

 ざっくり今シーズンの流れを頭から振り返ってみましょう。CF敗退直後、ほぼタダのような形でロケッツからウッドを獲得しました。この獲得には、ウォリアーズ戦で課題だった以下の2点を解決するための意図があったと思います。

・オフェンス・リバウンドに強い相手に対抗できるサイズの不足

・ハンドラーの個人突破依存のオフェンス

しかし、その代わりにチーム2番手だったブランソンを放出し、キャップに余裕のないマブスにとって貴重だったMLEでマギーを獲得したことから、ガードの穴は解消できないままシーズンを迎えることになりました。

 シーズンが始まると、ハンドラーが一枚抜けたことによるドンチッチ頼み過ぎるオフェンスが問題となりました。折角獲得したウッドの出番もなぜか限定的であり、さらに昨季良かったディフェンスの強度も落ちています。シーズン中盤まで勝率5割くらいをふらふらしており、この現状ではだめだと悟った運営陣はカイリーの電撃トレード獲得を決行しました。しかしそれでも成績は上回らないどころかむしろ下がり、最終的にはプレーインにすらカスらないような戦績で、今シーズンが終了しました。

 以上が簡単な振り返りです。いやー、いざ文字にしてみるとまあ悲惨ですね。期待値と現実とのギャップという意味では間違いなく歴代でも最低なシーズンだったと思います。

 

2章: トレードは本当に失敗だったのか?

 まずマブスファン以外の人が今シーズンのマブスの失敗について真っ先に挙げる理由として「カイリーがチームにフィットしなかったから」というのがあると思います。まずはこれについて見ていきましょう。カイリーとマブス全体のレーティングを比較して見てみると、

OFFRTG:121.4(115.9)DFFRTG:115.7(116.1)

※カッコ内はマブス全体の数字

 

となっており、ディフェンスはチーム平均以上、オフェンスに関してはチーム内トップのレーティングで、ここから見るに、失速の原因は彼個人のパフォーマンスの問題ではないといえるでしょう。外野から見るとどうしても、カイリーのトレードとその後の勝率を結び付けて揶揄したくなると思いますが、試合を見ているマブスファンの皆さんならそうではないことが分かるはずです。こうして数字で示すことで、両者の理解の差を埋めることができたら嬉しいです。ではなぜカイリーの数字は悪くないのに、トレード以降の勝率がこんなになってしまったのかについては、後述するのでそれまでお待ちください。

3章:オフェンスでの失敗

3-1:補強を無視した劣化オフェンス

 昨シーズンのプレーオフで効果的だったのはハンドラーに相手の弱いディフェンダーをスイッチさせてそこを起点にボコる、マッチアップメイクの部分です。


www.youtube.com

この試合なんか顕著ですが、ルカのシュートのほとんどはエイトン、キャム・ジョンソンなどの弱いディフェンダーにスイッチさせてからのものです。

 しかしそれが成立していたのはルカ・ブランソン・ディンウィディという強力なハンドラーが3人を試合通して2人、もしくは3人同時にコート上に置くことができたからです。さらにその強みも、マブスのスクリーンに対してブリッツしつつ、裏のカバーをドレイモンドが行うという、カリーへのスイッチをさせないことを徹底したウォリアーズ相手に全く通用せず、それがあったからウッドの獲得などでハンドラー依存の戦術から脱却を目指す狙いがあったはずです。それなのにいざシーズンが始まってみればハンドラーへの依存度は減るどころか増しています。そりゃ一人抜けたのに同じオフェンスしてるんだから当たり前です。

アイソレーション

ディンウィディ|FREQ%:25.9% PPP:0.99

ドンチッチ  |FREQ%:23.8% PPP:1.11

 

上の数字は選手の得点におけるアイソの割合と、その得点効率についてです。割合に関してはディンウィディがリーグ2位、ドンチッチが3位の多さです。ドンチッチくらい得点効率が良ければまあまだある程度は許容できますが、右に倣えでディンウィディまでやってしまっているのが問題です。これがシーズン序盤によく言われていた「マブスはドンチッチがいないとリーグ最下位レベルのチーム」という状況を引き起こしてしまっていたのです。

 またこれと同時にドンチッチのピック&ロールも減少しています。

ドンチッチの全得点におけるピック&ロールハンドラーとしての得点割合

2021-22→2022-23 :44.3→33.9%

 

4分の3くらいになってしまっています。オフに加えたのはビッグマン二人だったのにも関わらず、です。やっぱり去年のプレーオフで上手くいったイメージを、ロスターが変わったにも関わらず引きずってるように感じてしまいます。

 ところが実際チームのオフェンスレーティングはどうかと数字を見てみると、さらに理解するのに混迷を極めることになります

マブスのオフェンスレーティング115.9(リーグ6位

 

重苦しい印象とは違い、実際の効率自体はリーグ全体で見ても普通に良い方です。これにはシーズン中盤のドンチッチのスーパーな活躍の部分が大きく起因していると思われます。

www.youtube.com

内容は苦しくてもその圧倒的なパフォーマンスのおかげでなんとか勝率5割近くをキープできたことは、しかしながらマブスの根本的な問題の解決を後回しにすることになりました。なんとかチームをギリギリ現状維持はできても、82試合+プレーオフでこの形を続けるのは不可能ですし、これ以上オフェンス力を底上げするのなんてもってのほかです。ハンドラーの個人突破に固執し続ける以上、マブスのオフェンスに未来はありません。

3-2:カイリー・マジック

 カイリーのトレード後、ドンチッチが欠場の中、エースとしてチームを引っ張ったのは2試合。たったの2試合ですがマブスファンに強烈なインパクトを与えたのは記憶に新しいです。早いボールプッシュからテンポの良いパス回し、オフボールでも味方のためにスクリーンをかける献身性、THJ、ブロックなどの調子のいいシューターがいたらそこに積極的にアシストし、チームに流れを引き寄せようという姿勢、チームが停滞した、ここぞという場面で決めてくれる必殺の個人技と、加入後たった2試合で、単調だったマブスのオフェンスに多彩さをもたらしてくれました。


www.youtube.com

 

カイリー加入後2試合のチームの平均アシスト数:30

 

シーズン平均が22.9なのを考慮すると、見違えるようにボールが回っていることが分かります。カイリーのもたらした新しい風はドンチッチのダムダムスローテンポバスケを見続けていた我々にとっては新鮮すぎて、ドリアン、ディンを失って意気消沈していたマブスファンの心をあっという間につかんでいきました。

 しかしこの形は長くは続きませんでした。ドンチッチが戻ってきてからは徐々にまたハンドラー依存の元の形に戻り、あの華麗なボールムーブは鳴りを潜めてしまいました。折角停滞感のあったオフェンスに新たな形が生まれる兆しがあったのだから、復帰後のドンチッチがもっとカイリーに合わせに行く姿勢を見せてほしかったなー、と思っちゃいますし、もしあの形が続いていれば…という後悔はぬぐえません。ただまあシーズン終盤に加入した選手を中心に、チーム戦術をガラッと変えるというのはなかなか難しいということはもちろん理解できます。

 しかしよくよく考えてみてください。シーズン開幕前の課題として、「ハンドラーの突破以外のオプションの開拓」というのは確かにあったはずです。もしその意識をもっと強くもってシーズン序盤で取り組めていれば、カイリーのもたらした新しい形は、既存のマブスオフェンスにスムーズに取り入れられたのではないでしょうか。ここでも去年の成功に拘る姿勢が悪さをしています。スモール体制にしたのは所詮シーズン終盤の30試合+プレーオフのものです。これと全く同じように82試合できると考えるのは、流石に楽観的過ぎたのではないでしょうか。

 

4章:ディフェンスでの失敗

4-1:昨季の強みのおさらい

 ディフェンス面ではどうでしょう。自分の周りでは「去年のプレーオフを見て対策されたせいでもう通用しなくなった」という声をよく聞きましたが、具体的にどう対策されたのか自分では分かっていませんでした。なので今回それについてもっと深掘りしていきたいと思います。

 昨季の終盤からプレーオフにかけてのマブスのディフェンスの強さは、相手のドライブレーンを閉めるようなポジショニングと、抜かれても次のヘルプが用意されているという機動力を生かしたローテーションにありました。


www.youtube.com

2021-22シーズンのマブスのディフェンス

DEFRTG:109.1(7位)

BLK:4.0(28位) STL6.7(29位) Deflection:11.8(29位)

相手のチームのEFG%:52.1%(9位)

 

ブロックやディフレクション(相手の保持するボールに触る)など直接ボールを取りに行く回数は少ないものの、素早いローテーションで相手にプレッシャーをかけ続け、相手のシュート成功率を抑えることで、昨季のディフェンスは成功しました。

4-2:今シーズンの変化

 それを踏まえた上で、今シーズンはどうディフェンスが弱体化してしまったか見ていきましょう。

①ブロックの衰え

 昨シーズンのスモールラインナップのディフェンスの要だったブロック。プレーオフでは平均出場時間39.3分とシボドーもびっくりなくらい酷使されていましたが、それだけマブスディフェンスにとっては欠かせない存在で、ブッカーやクリスポールを抑えることに大きく貢献してくれました。

 しかし今シーズンはそんなブロックに衰えが見え始めます。実はウォリアーズとのシリーズでも露呈した弱点ではありましたが、スピードのあるガードにとにかくブチ抜かれる場面が目立ちました。今シーズンはウィングディフェンダーの相方であるドリアンの欠場もあり、彼にかかる負担はさらに大きくなってしまい、ますますパフォーマンスが悪くなってしまいました。

ブロックのオンコート/オフコート時のチームのディフェンスレーティングの比較

2021‐22:106.7/109.0

2022-23:116.5/112.7

 

昨シーズンはブロックがいないと2.3下がってしまったディフェンスレーティングが、今シーズンはブロックがいると3.8下がってしまっています。32歳という年齢もあり、正直もうスタメンで長時間出し続けるには厳しいということが露呈してしまいました。

 

②プレッシャー強度の低下

キャッチ&シュートの被成功率

2021-22のEFG%:51.8%(5位)

2022-23のEFG%:55.2%(18位)

 

 ブロックやディフレクションなどのボールに直接関わる系のディフェンススタッツは昨シーズンと変わらないのに、相手のシュート成功率は上がってしまっています。試合を見ているとシンプルにローテーションの速度やプレッシャーのかけ方が昨シーズンに比べて弱くなっていて、結果的にワードオープンで外のシュートを打たせることにつながっているように感じます。

 特にそれが目立ったのはドンチッチです。もともとディフェンス時にボールウォッチャーになりがちなところがありましたが、今シーズンはさらにその弱点に磨きがかかり、マークマンをすぐ見失い、特に複雑なパス回しとかではなく、シンプルなワンパスで打たれまくるシーンが目立ちました。


www.youtube.com

ドンチッチのディフェンスについては↑の動画の説明が分かりやすいです。簡単にまとめると、「IQが高く体格もいいので、ディフェンスのポテンシャルはあるが、集中力や努力の振れ幅が大きく良いパフォーマンスが長続きしない」というのがドンチッチのディフェンスの特徴です。まさに今シーズンはその集中力と努力の部分が明らかに良くなかったですね。自身が語っていたように、バスケ以外の面で抱えていたフラストレーションがコート上のパフォーマンスにそのまま響いているように感じます。

basketnews.com

 また地味なディフェンス悪化の原因として考えられるのが、相手に与えたフリースローの数です。

マブスの被フリースロー成功数

2021-2022:15.8本→2022-2033:19.5本

3.7点分の得点の差分が生まれています。これがなければ7位のサンズと同じくらいのレーティングになるので、なかなか見過ごせません。ファールはハイライトなどではなかなか分かりずらい部分なので、スタッツを見るまで気づきませんでした。今シーズンは怪我の多いシーズンであったので個々にかかる負担が強く、それがディフェンス面でジワジワと響いた結果、どうしてもファールで止めに行く場面が増えてしまったのかもしれません。

 

③月別で見るディフェンスの変化

 今シーズンのディフェンス力はずっと一定だったわけではありません。シーズンの中での変化を知るために、レーティングを月別に分けて見てみましょう

ディフェンス・レーティングの変化

10月→110.0 11月→110.0 12月→115.9 1月→119.1 

  2月→117.2   3月→117.6   4月→121.5

 

 10月、11月の110.0という数字は今年の他のチームでいうと2位BOSの110.6以上の数字なので、この時はまだディフェンスの強度は保てていたといえるでしょう。

 12月に入って、ドリアン、マキシら守備の要が相次いで離脱します。これによって一気にディフェンス力が落ちてしまいましたが、そこで半ば怪我の功名のような形でスタメンになったのがウッドです。12月のウッドのディフェンスレーティングは114.7とチーム平均より良い数字を叩き出しており、これが後になって重要になってくるので覚えておいてください。

 1月はそのウッドが7試合、ドリアンが5試合、クリバーに至っては全試合欠場することになり、この時期のディフェンスは最悪でした。まあこればっかりは仕方がない部分の大きいですね。

 2月は引き続きクリバーがほぼ全試合欠場。ウッドが怪我から戻ってきますが、なぜか出場時間は復帰前に比べて大幅に下がってしまいました。そしてドリアンのトレードでチームディフェンスの要を失います。こうした要因もあって、やはり依然としてディフェンスは苦しいままです。

 3月は待望のクリバーの復帰。しかしそれでもディフェンスは依然として上向かず、昨シーズン作りあげた強固なディフェンスは、結局復活の兆しを見せることなくシーズンを終えることになります。

 こうして数字を見てみると、印象以上に怪我の影響が大きかったんだと感じます。それと同時に、後半になるにつれて悪くなっているのを見ると、昨シーズン後半にできていたものを82試合続けるということが、いかに難しいことかを感じさせられます。

4-2:「ディフェンスがダメだから負けた」は本当か

 ここまでオフェンス面、ディフェンス面の両方について深掘りしてきました。ここで、もう一度攻守のレーティングに立ち返ってみましょう。

マブスのレーティング

オフェンス:115.9(リーグ6位

ディフェンス:116.1(リーグ25位

 この数字をみて普通に考えたら「オフェンスは普通にいいから、やっぱりディフェンスがこれだけ低かったのがダメだったんだね」となると思いますし、ディフェンスに改善の余地があるのは上記の通りです。

 しかしドンチッチ・カイリーというリーグ最高クラスのハンドラーに加えて、オフェンス面ではやれないことがないくらいの多彩なビッグマンであるウッドを抱えながら、「普通にいい」くらいのオフェンスで本当によかったのでしょうか?守備の要のドリアンを放出し、カイリーを取った時から守備面の弱体化にはある程度目をつぶる覚悟はあったはずです。

キングスのレーティング

オフェンス:118.6(リーグ1位

ディフェンス:116.1(リーグ25位

それを実現できたチームが同じシーズンにいたのだから、尚更そう思ってしまいます。ディフェンスレーティングはマブスとほぼ同じなのに、かたや西3位の好成績、かたやプレーインにすら入れないチーム。こうも明暗が分かれてしまうと、いかに「振り切る」ということが大事かということを感じずにはいられません。

 

5章:迷将・ジェイソンキッド

 今シーズン多くのマブスファンを困惑させ、イライラさせ、最終的には絶望の淵に追い込んだ張本人ことジェイソン・キッドさんの登場です。数々の迷采配を振り返っていきましょう。

5-1:理解不能な選手起用~ライトとニリキナ編

 開幕直後にカンパッソ、ケンバとコロコロ控えガードをいじった後、白羽の矢がたったのは2wayのマッキンリーライトでした。オフェンスは粗削りですが、ディフェンス面でハッスルしてくれるライトを起用したことは、オフェンシブな控えガードで失敗した結果の選択としては一応納得いきます。しかしよく考えてください。ディフェンシブなガードを起用するなら、うってつけの選手がいるじゃないですか。そう、昨プレーオフでブッカーを一番抑えた、CF出場の影の立役者、ニリキナです。昨シーズンのレギュラーシーズンもキッドは彼を限定的な起用にとどめましたが、今シーズンも結局それは変わりませんでした。いったい彼の何がそんなに気に入らないんですかね。

で、実際二人の数字がどんなもんだったか比較してみましょう。

レーティング比較

ライト |OFFRTG:102.7 DFFRTG:117.6 NETRTG:-14.9

ニリキナ|OFFRTG:113.5 DFFRTG:108.4 NETRTG:+5.8

 

…やばくないすかこの数字?ネット・オフェンス・レーティングはチームワースト、売りだったはずのディフェンスもチーム平均以下です。試合を見てると、とにかく無策にドライブに突っ込んで何も生まれない場面が多く、しかもボール保持時間が長いので彼がいる時間は常に停滞感があったように感じます。正直ライトは実力がまだ足らないうちに謎にキッドに気に入られてしまったばっかりに批判の場に立たされてしまったかわいそうな立場にいるので、あんまり彼のことを責めるのはやめましょう。ただこの数字を見て、ライトを優先し、ここまでレーティングのいいニリキナを47試合の出場に留めるというのは、納得しろといっても無茶な話です。

5-2:理解不能な選手起用~ウッドとクリバー編

 全体通して見れば大失敗だった今シーズンですが、良い時期が全くなかったわけではありません。12月の中盤から年明け直後に7連勝があり、上昇の兆しは確実にありました。その際の大きなポイントとして、ドリアンやクリバーの離脱に伴って、ウッドがスタートしていたことです。スタメンウッドは上手くいっていたといえるでしょう。ところがキッドはそんなの知るかといわんばかりにウッドが怪我から復帰後は何もなかったようにベンチ出場に戻すどころか、出場時間は大幅に減ってしまいました。上手くいった部分を最大化できればよかったのですが、昨シーズンの形にこだわり過ぎた結果、その僅かな光も闇に葬り去ることになってしまったのです。もはやただウッドのことが嫌いだったとしか思えないですね。

 じゃあ実際ウッドのディフェンスはどうだったのか、レーティングを見てみましょう。

ウッドのディフェンスレーティングの変化

オールスター前:114.5

オールスター後:123.8

 

こうしてみると後半から大きく数字を落としていることが分かります。では今度はウッドがスタメン時のスタッツを見てみましょう。この時期は守護神としての才能が一番開花しており、ブロックを量産していました。

ウッドがスタメン時(16試合)のディフェンス・スタッツ

ウッドがディフェンス時の相手のリング周りのFG%:51.7%

 

この数字はロペス(50.2%)やケスラー(51.5%)といった守護神タイプと近く、数字上でも確かにゴール下の守備に貢献していたと捉えることができます。

 ではどうしてシーズン通して見るとレーティングが悪くなってしまうのでしょうか。この謎を紐解くために、ウッドがコンテストしたシュートの種類についてのスタメン時とシーズン平均とで比較してみましょう。

コンテストしたシュート本数

シーズン平均…2PT:6.5 3PT:1.9

スタメン時 …2PT:8.4 3PT:1.5

 

スタメン時には2Pの数は増加し、3Pは減っています。これはスタメン時はセンターとしてプレーし、ゴール下の守備に注力していたことで、良い結果を出せていたといえるのではないでしょうか。

 ここで重要となってくるのが怪我で離脱していたクリバーの復帰です。同じビッグマンの彼が復帰したことで、ウッドの出場時間は減ることになりましたが、もう一つの変化はウッドが守るポジションの変化です。ホーネッツ戦のJT・ソーの得点シーンを例に見てみましょう。


www.youtube.com

クリバーとウッドが同時に出ている時間帯、センターのマークウィリアムズをクリバーが守り、パワーフォワードのソーをウッドが守っており、ソーは積極的にスリーを打っています。スタメン時に見せたウッドのゴール下での守備力を活かすのならば、2人のマークマンは逆であるべきです。クリバーはポジションに拘らず守れるのが強みであるので、それならばクリバーに外のディフェンスをさせてもいいはずです。この試合に限らずウッドが外を守らされる場面はスタメン期間以外ではかなり目立ちました。結局キッドはウッドのスタメン時に出した結果を無視し、去年からいたクリバーを妄信していることが透けて見えます。これも、昨シーズンの形に拘り過ぎて、戦力を活かすことを考えないキッドの浅い考えが表れています。

 そして復帰後のクリバーは明らかに不調でした。にも拘わらずキッドはクリバーを妄信しました。クリバーが復帰した3月中のスタッツが以下のようになります。同時期のウッドと比較してみましょう。

3月のクリバーとウッドの比較

クリバー…26.6分   5.5点 FG:35.4% 3P:31.6% OFFRTG:112.6 DFFRTG:122.0

ウッド …21.7分 13.8点 FG:50.0% 3P:37.5% OFFRTG:118.4 DFFRTG:124.7

 

3月のマブスのディフェンシブレーティングは117.6なので、クリバーもウッドもディフェンスに貢献できてはいません(しかもウッドは苦手な外を守らされている)。一方オフェンス面では自信を失っているクリバーに対して、ウッドは効率よく稼いでいます。にもかかわらず出場時間はクリバーの方が5分も多い。流石に納得できません。

 確かにウッドは万能なディフェンダーではありませんし、相手の外のシュートへのチェックは甘いです。しかしゴール下に限定すれば力を発揮できることは、スタメン期間に証明されており、何よりオフェンス面での万能性は、短所を補って余りあるものだと思っています。選手の短所を隠して長所を最大化する、これこそがコーチの役割のはずです。怪我の功名で見つけたウッドの強みを活かすことができず、結局去年の良かった形に固執する。流石インタビューで「I just watching」とか言ってしまうコーチです。

5-3:アンタイムリーなタイムアウトの連発

 連続得点されても取らない、ひたすら待つ。かと思えばこちらが流れに乗っているタイミングでなぜかタイムアウトを取る。もう何を考えてるのか分かりません。恐らくキッドの目には我々が見ているバスケットボールとは全く違うものが見えてるのでしょう

 

 


www.youtube.com

5-4:クラッチタイムの弱さ

これらの要因が全て重なった結果がこれです。マブスは今シーズン、クラッチタイムでリーグ最多の29敗を喫しています。特にその中でも逆転負けの多さが目立ちました。22点差を逆転されたサンズとの開幕戦から始まり、残り4分15点差から追いつかれたサンダー戦、プレーオフ争いのライバルに対して27点差を逆転されたレイカーズ戦、その他二桁点差の逆転くらいならあり過ぎて、数え始めればきりがありません。必要な役割や選手の調子を考えない選手起用、流れを切ることを知らないタイムアウトタイムアウト明けに何の策もなくルカに預けるだけのATO…これらの要素をつなぎ合わせれば、クラッチタイムに弱いのはむしろ必然とも言えるでしょう。


www.youtube.com

 

 

6章:来季の展望

 本来ならば今シーズンの反省を踏まえてじゃあドラフト、FA,戦術はどうなっていくか考えるところですが、そんな気は起きません。なぜならコーチはジェイソンキッドであり、そしてその立場を確実なものにしてくれる、マークキューバンがオーナーがだからです。

「a fish rots from the head」という言葉があります。直訳すると、「魚は頭から腐る」、つまり「組織がダメになるのはトップの人間がダメだから」という意味です。なんて今のマブスにピッタリの言葉でしょうか。トップがダメな限り、誰を補強しようと考えても無駄です。無駄な希望なんか持たず、現状から目を背け、他の楽しみを見つけてさっさとこの泥沼から逃げ出しましょう。

 

 

7章:最後に

 こうやって夢も希望もない形で締めてしまうほど流石に僕もサディストではありません。最後に一つだけ希望の見える話をしたいと思います。その話とはバックスを優勝に導いたブーデンホルツァーについての話です。ホークス2年目でリーグ屈指のチームオフェンスを展開するチームを作ったと思ったら、バックスでは既存のオフェンスを5アウトにガラッと変え、ヤニスの力を最大化することに成功しました。そんなブーデンですが、プレーオフの成績はというとなかなかさえず、その度に言われたのが、「対応力の低さ」です。ホークスでは「パッシング重視のチームオフェンス」バックスでは「ヤニスを最大化する5アウトと強固なドロップディフェンス」という強力な軸となる戦術をもたらしましたが、プレーオフでは逆にその強力な軸に拘りすぎてしまい、特にバックス時代はヤニスへの「壁」を築くディフェンスとキックアウトからのスリーを徹底したラプターズ、ヒートに同じような負け方をしてしまい、2年連続リーグ1位にも関わらずファイナルに進めませんでした。特にヒートへの敗戦後はその負け方の悪さから、ブーデンホルツァー解任の声が飛び交っていたように記憶しています。

 

  そんな「プレーオフで勝てない」、「対応力のない」という評価を受け続けていたブーデンホルツァーですが、バックス運営陣は彼を見限ることはしませんでした。迎えた2020-21シーズン、勝率は前2年と比べて落ちてしまいましたが、その代わりにプレーオフで使える手札を用意すべく、シーズン中から色々な戦略を試していたそうです(どこかの記事の情報だったはずですが、忘れちゃったので分かりません…、知っている方いたらリンク送ってほしいです)。そして迎えたファイナルで、迎えるのはブッカー・クリポ要するサンズ。開幕2試合を落としますが、その敗戦の後、バックス、そしてブーデンホルツァーは過去2年の課題への解答を示しました。ヤニスをロールマンとして使う回数を増やす、そしてさらにロペスの起用時間を抑え、ヤニスをセンター起用し、スイッチで対応するという方針に切り替えることで、スリーやミッドレンジを得意とするサンズのオフェンスを抑えることに成功、悲願の優勝を果たしました。外野から「対応力のない」と言われ続けたコーチが、対応力を身に着けて優勝したことは、キッドを抱える我々マブスファンにとって励みになるのではないでしょうか。

 コート上で自分自身を表現する選手と違って、外野の僕たちはコーチのことをせいぜい起用方法やインタビューの内容からしか評価することはできません。今はクソコーチだのハゲだの言われてるキッドですが、選手とのコミュニケーションは誰よりも取っているかもしれませんし、そもそも戦術を考えるのはACの仕事だったかもしれません。キッドの一挙手一投足にイライラしないためにも、自分の見えない部分は都合のいい解釈をして、来季コーチとして成長したらいいなくらいの気持ちでいきましょう。

 

 そんくらいの気楽な感じでやってきたい(じゃないとやってられない)ですね。来季の開幕までは4か月もあります。4か月はみんな横並び、去年だってマブスのプレーイン脱落も、キングスのプレーオフ進出も、予想してた人はいなかったはずです。どうせ期待値は底辺まで下がったのだから、来年は気楽な気持ちで迎えましょうということで、今回の分析を終わりにします。こんな長い文章を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

 

 

"Blue in his veins" ドリアンとの思い出

The NBA Player Shooting His Way From Undrafted to Undervalued - WSJ

 僕のツイッタードメイン名:@mavsfanfordfs はDFSことドリアン・フィニースミスから命名したんですよね。2019年に作ったこのアカウントですがその当時在籍していた選手では一番、いや歴代マブスの選手(自分が見始めた2013-14シーズン以来)の中でも確実にトップ5には入るくらいお気に入りの選手でした。

 

 そんなドリアンが今日、トレードされました。

 

 シャムズからの報道が出ていた時点である程度覚悟はしていました。ドンチッチのいるマブスにとって、優勝するための補強は必須。そのためのトレードのアセットとして、ドリアンは間違いなく候補になってくる。頭では理解してたんですが、いざトレードが起こってしまうと感情が追い付いてきません。

 今回は最高の男・ドリアンの思い出について振り返っていきたいと思います。

 

  • 出会い

  ドリアンが初めてスポットライトを浴びたのは2016-17シーズン。当時のマブスはなんというかこう…まあ嚙み合いが悪かったというかこう…調子が悪かったといえるというか…普通にクソ雑魚でした(オブラートがブチ破れる音)。新たにエースにハリソン・バーンズを迎え(エースにハリソン・バーンズを迎えというパワーワード)開幕から順調に連敗街道をひた走っていたマブス。そんな希望もへったくれもないマブスに突如現れたのが無名のドラフト外選手でした。シュートも下手で自分でオフェンス作るなんてもってのほかでしたが、とにかくディフェンスとハッスルで何がなんでもチームに貢献しようというその姿勢。23歳でデビューという、ルーキーにしては歳を食っていたからこそ、その姿勢が生まれ、それが彼のアイデンティティになっていったのでしょう。クソ雑魚マブスにとって唯一の希望といってもよかったんじゃないかと思います。ドラフト外ルーキーながら35試合に先発出場したのは信頼の証だったといえるでしょう。

 

  • 成長

 ドリアンの凄いところ、そして自分が最も魅力的だと思っていたところ、それは年を重ねるごとに新たな武器を身に着けていったところです。上記のようにデビュー当初はオフェンス力の欠片もない選手でした。それはスタッツが示しています。しかし彼は自分の弱みを理解し、今年はコーナーからのキャッチ&シュートを、今年はカウンタードライブを、今年はプルアップのスリーをと、少しずつ武器を増やしていっています。最初はほんとにワイドオープンは状態でしか打たなかったスリーも、リリースを早く改善することで今では少しタフな状況でも打てるようになりました。そしてドリアンの成長はマブスの成長とも重なるものがあり、昨年のCF進出時にはドリアンの成長した部分が存分に発揮されていたと思います。それでいて自分の強みであるディフェンスとハッスルの部分は忘れずにきっちり仕事をこなしてくれるところが彼の魅力的たる所以でした(聞いてるかTHJ)

 

  • リーグ屈指のスリー&D、だけじゃない

 個人的にドリアンの最も過小評価されている能力が、彼のオフェンスリバウンド(以下OR)だと思っています。スタッツを見ても総リバウンド数に対してOR数が多いのがわかるでしょう。ハンドラーの突破中心でお世辞にもきれいなオフェンスをするとは言い難いマブスに取って、ポゼッション数を増やしてくれる彼のOR力は貴重でした。時には派手なプットバックダンクをブチかまし、チームに流れをもたらしてくれました。


www.youtube.com

 

 

  • ムードメーカー

 一緒にいたわけではないので(当たり前)、これはあくまで表に出ている情報だけでしか語れませんが、ドリアンはムードメーカーとしてもチームを支えてくれてと思います。ちょっと強面なドリアンですが、実はよく笑うし、他の選手が活躍した後に絡んでいる様子をよく見せてくれました。マブスの選手、というかドンチッチがお気に入りが偏っていた(いつもボバンの隣にいる、ポルジンギスと深い絡みを見せない等)ので、そんな中で誰にでも陽気に絡みにいくドリアンが選手仲を取り持っていたように見ていて感じました。下の動画のシーンは特に印象的でした。 

www.youtube.com

 

  • 印象的な試合

最後にドリアンのキャリアの中で印象的な試合を振り返っていきましょう。

 

2016/11/6 vs MIL(ハイライトなくてすいません)


www.youtube.com

 ドリアンの実質的なデビュー戦といってもいい試合であり、彼の存在が初めて世に知られた試合。スタッツだけ見ると5点3リバウンドと大したことないのですが、この試合のヤニスを止めたこと。無名のドラフト外ルーキーがその年のオールスターのスターターに対して11点、FG 4/12に抑え、TOV5を誘発したことにマブスファンは驚嘆。OTまで行って86-75と、2004年のピストンズもびっくりのロースコアゲームを制した要因は、間違いなくこの無名のルーキーの活躍でした。ドリアンはこの試合の後すぐに先発になり、彼のキャリアの転換点といっていい試合だったと思います。

 

2019/11/18 vs SAS


www.youtube.com

 ドリアンの良さが全て出たといっていい試合。交錯した状況に飛び込んでいくハッスル、速攻の先頭を走ってダンク、スリーを決める、そして終盤のショットクロックギリギリからのミラクルショット。22点でキャリアハイ更新。この試合は劇的な勝ち方だけあって、非常に印象に残っています。同じく42点でキャリアハイを更新したドンチッチにヒーローインタビューで「Dorian finney-smith. That’s it.」と言わしめるほど、この試合のドリアンは輝いていました。この年マブスは3年ぶりにプレーオフに進出しますが、その飛躍のきっかけとなったように感じられた試合でした。

 

2021/5/1 vs WAS


www.youtube.com

 序盤のリードを溶かすマブスらしい展開で接戦の4Q、相手の追い上げムードを断ち切るスリーと執念のドライブからのゴール下。そして残り9秒、2点差で負けている場面での値千金のコーナースリー。決勝弾決めた後のドリアンの咆哮と仲間とのアツイハイファイブ、そしてインタビュー中に水鉄砲を目ん玉に直撃させる鬼畜すぎるブランソンが忘れられません。


www.youtube.com

 

 

 

2022 CSF Game4 vs PHX


www.youtube.com

 

 ドリアン史上最高のゲーム。サンズとのプレーオフセミファイナルで開幕2連敗で後がないマブスのゲーム4。この正念場でドリアンが男を見せました。スリー8本はキャリアハイ。4Qには一気に流れを持ってくる速攻からの連続スリー。そして魂のガッツポーズ。クソ雑魚チームでスリー3割も入らなかった男は、成長したスリーでチームをCF進出まで押し上げるまでの存在になりました。

 

 

  • 最後に

 昨年はルカと二人で優勝への最強デュオだと信じてやまなかったポルジンギスを、そして今年はマブスの魂を失いました。二年連続しんどいトレードですが、それだけの価値がある選手になったとポジティブにとらえて送り出したいと思います。誰よりも勝利に貪欲で自分の仕事を理解し、タフでマブスの縁の下を支えてくれた最高の男でした。新天地でも頑張れよ。

 

Thank you, Doe-Doe!

Dorian Finney-Smith's gritty rise, bond with Luka Doncic shows Mavs got  free-agent bargain

 

補強だけが全てじゃないという話 ~バックスの優勝から考える~

f:id:forever41:20210803162718j:plain 

  今更of the year ですが、バックスが優勝しましたね。僕は推しチームが敗退しても最後までしっかり見る派なのですが、スモールマーケットのフランチャイズプレーヤーがチームを優勝に導く姿を勝手にマブスに重ねて妄想してたりしましたね。

 結果として非常にいい形での優勝となったバックスですが、最初からずっと順調だったわけではありません。「JRガチャ」、「クラウダーガチャ」など、数々の波激しい系選手のトップに立った「ホリデーガチャ」は、2試合に1回大当たり、それ以外は大外れというように、オフェンスにおいては最後まで不安定でした。ミドルトンはホリデーほどではないにしても、同じく波の激しい選手であり、そして何と言ってもヤニスのフリースローはこのプレーオフの名物と言っていいほどメディアに取り上げられたりファンに挑発されたりするなど、バックス側にとっては非常に不安要素でありました。あまりにプレーオフで煽られ過ぎたせいか段々とヤニスのフォームも安定してきて、最終戦では今までの鬱憤を晴らすかのような圧巻の17/19でしたが、同じ東のセミファイナルでハック・ア・シモンズによってシクサーズが半ば自滅したようになったのを見ていたことで、プレーオフが佳境に入ってきた段階でもなおバックスを優勝候補に推しづらかった人も多かったのではないでしょうか。

 ここでは別にバックスが勝ったのが運が良かったとかそういうことを言いたいのではなく、不安要素を抱えつつもそれを完全に解決しないままでも優勝したという事実はこれから次のステップに進もうとする他のチームにとって励みになり、参考にすべきものになったということです。僕はマブスファンなので、やはりこれからのマブスと重ねて考えたくなります。今年はドンチッチのルーキー契約最終年かつキャップスペースが約30Mほどあるので、今オフの補強は今後数年に関わる非常に重要なものになるでしょう。そうして考えたときに、マブスの補強で何が必要かと考えたとき、

①ドンチッチを助けられるレベルのエリートなボールハンドラー

②ウィングディフェンダー

③アスレチックなビッグマン

なんかが挙げられます。そうなると①、②を満たせるのはカワイで③はホルムズでそうなるとサラリー足りなくてダメやん!みたいな思考に陥りがちです。このように、今抱える問題とFAにいてそれを解決できそうな選手、そしてサラリーがピッタリ合致するようなことは稀であり、「理想的な補強」というのは文字通り「理想」でしかないものだというように思えてきます。

 これを昨シーズン終了後のバックスに置き換えると、プレーオフで露呈した課題は

①ゲームを通してプレイメイクできるような安定したボールハンドラー不足(ブレッドソーではちょっと…)

②ディフェンスでの戦術の柔軟性のなさ(ドロップ以外できない)

この2つが主だったものでした。オフシーズンにはクリス・ポールのトレード獲得が噂されたのは①を解決するためだったと思います。結果として獲得したのはホリデーで、オフェンスにおける安定感という意味ではクリス・ポールに大きく劣ります。

 ①を解決するためにバックスは一人の安定したボールハンドラーを求める代わりに、やや安定感に欠けるハンドラー3人でその役割を補い合うという手に出ました。ホリデー・ミドルトン・ヤニスの3人は使う側にも使われる側にもなれることで、「3人の内2人が活躍すればいい」くらいの感覚でいたように感じます。

 ディフェンス面に話を移しましょう。ホリデーやタッカーの獲得は間違いなくバックスディフェンスの戦術に柔軟性をもたらしました。しかしそれ以上に重要なのは、よりディフェンスに柔軟性を持たせるための取り組みを、シーズン中からしていたということです。

www.thescore.com

この記事に書かれているように、バックスは過去2シーズンの失敗を受けて、ヤニスをスクリーナーとして多く使ったり、試合終盤でのスイッチの回数を増やすなど、まさにファイナルでバックスがやったことをレギュラーシーズン中に試していました。ヤニス・ミドルトン・ヤニスというここ数年のバックスの成功に貢献してきたコアメンバーを保持しながらのこの変化は、補強が全てとは言えないことを示唆しているのではないでしょうか。

 また、ロペスについても触れなければなりません。バックスがスモールラインナップを多用したため、どうしてもファイナルでは影が薄くなってしまったロペス。しかし彼がディフェンスでボコボコにされたのはオールスイッチを貫いた第1戦くらいで、それ以降はホリデーが高い位置からプレッシャーをかけることでクリポにスペースを自由に使わせなくさせ、かつロペスを抜かれた際のショットブロッカーに徹しさせることで、上手くロペスの弱点を隠していました。使える選手が限られてくるプレーオフにおいて、穴になりそうなロペスを上手くディフェンスで有効活用できたのはバックス側の地味なファインプレーだったと思います。

 なにが言いたいかというと、補強が思い通りにいかなくても、チームの抱える問題を解決する手段は補強以外にもあるということです。オフェンスではポルジンギスやティムハにオフボールスクリーンからのシュート、ピック&ポップのスクリーナーなど、能動的にシュートを打たすポゼッションを増やして疑似的にセカンドハンドラー問題を解決するインサイドが脆弱でリバウンド争いに弱いなら、ある程度外から打たれるのを許容する代わりにインサイドへの侵入だけは防ぎ、安全にリバウンドを確保する。こんな考え方をすれば、補強せずともなんとかなる気がしてきませんか。

  何よりこうした考えを持っておけばFAで欲しい選手が取れなくても気を楽に持てます。マブスは今までも数えきれないほどの人気FA選手に逃げられてきた歴史もあり、今年も同じ道を歩んでしまいそうな気がします。ですからマブスファンの皆さん、気楽にいきましょう。長く続いたカーライル体制も終わり、キッドHCになったことでチームスタイルも大きく変わってくれるんじゃないでしょうか。ってまあそのHCが一番不安だよって言われればそりゃそうなのですが(笑)


www.youtube.com

 

 

カーライルとの思い出

 朝起きたらカーライルはマブスのヘッドコーチではなくなっていました。プレーオフ敗退直後はまだチームにいるようなことを示唆するコメントを出していただけに、この決断にはかなりショックです。多くのマブスファンにとってマブスのコーチはずっとカーライルだったんじゃないでしょうか。僕は2013-14シーズンから見始めたので、残念ながら優勝した時の思い出を語ることはできませんが、今回は個人的なカーライルの思い出を振り返っていきます。
 

 

 

2013-15 モンテ・エリス時代

f:id:forever41:20210618162023j:plain 

 僕がマブスを見始めたシーズンが2013-14シーズン、ノビツキーのファイナルのハイライトきっかけで興味をもった初めて見たマブス戦で、ノビツキー以上に興味を惹かれた選手、それがモンテ・エリスでした。モンテ・エリスと言えば、カリーとの不仲でバックスにトレードされ、その後カリーとウォリアーズが王朝を築いていったことから、一般的には失敗した選手として扱われがちです。しかしマブスでの2年間ではエースとして非常に効果的な働きをしてくれました。それも彼のスタイルがカーライルのオフェンスシステムと合っていたからだったと思います。この年のもう一人の先発バックコートはホセ・カルデロンであり、彼とエリスの二人のテンポのいいバランスアタックは、カーライルの代名詞とも呼べるオフェンスでした。決して傍から見れば強力なロスターとは言えませんでしたが、それでも一回戦でその年優勝するスパーズと7戦まで縺れる死闘を繰り広げたことは、マブスとカーライルの評価が改めて上がった年になったのではないでしょうか。

 次の2014-15シーズン、昨プレーオフでのスパーズへの健闘から、チャンドラー×2やジャミーア・ネルソンなどの選手を獲得し、オフの積極的な補強に成功しました。開幕してすぐに2011年優勝の立役者であるバレアも取り戻し、開幕当初はウォリアーズと並んでリーグ屈指のオフェンス力を誇ってました。更に優勝を目指すための補強として、セルティックスからレイジョン・ロンドをトレードで獲得。しかしこれが後にカーライルとの衝突、そしてチームの勢いの失速につながったのは周知の事実です。これは後にドンチッチとの関係についてのところでも触れますが、カーライルはボールを長く持ってプレイメークするタイプのPGとは馬が合わない傾向にあるんじゃないかと思います。ロンドという偉大なポイントガードが加入したものの、複数のボールハンドラーが主体のカーライルのオフェンスとは合わずに、自慢のオフェンス力もトレード前に比べて段々と落ちていってしましました。

 そんな良くない印象のあるシーズンでしたが、プレーオフで孤軍奮闘したのもまたエリス。1-4でロケッツに惨敗したシリーズでしたが、そんな中でも平均26.0点5.2アシストとマブスを引っ張ったエリス。その後移籍したペイサーズでは活躍できず、NBAから姿を消してしまったこともあり、キャリアの中で一番勝ちに貢献した時期でもあったということからも、カーライル×モンテ・エリスのバスケをもっと見たかったなー、と思いますね。

 

 

 

2015-16 絶望からのサプライズ

f:id:forever41:20210618165756j:plain

 プレーオフでの惨敗を踏まえて戦犯扱いされていたロンドの放出、そして未来のチームの柱としてデアンドレジョーダンを獲得しようとしました。しかしなんだかんだごたごたがあってデアンドレクリッパーズに残留、デアンドレが来る前提で獲得できるはずだったジェレミーリンはホーネッツに、デアンドレ獲得報道で失望したタイソンチャンドラーはサンズに移籍してしまいました。そして僕が一番悲しかったのが、過去2シーズンチームのエースとして引っ張ってくれた    モンテエリスがペイサーズに去って行ってしまったことです。個人的にマブスでトップ3に入るくらい好きな選手だったので、この移籍はほんとに落ち込みましたね。結果として誰も残らなかったロスターは過去3年間の中でも最弱であり、シーズン開幕前、マブスプレーオフ予想する人はほとんどいませんでした。しかしシーズンが始まってみると5割以上の勝率をキープし、大方の予想を裏切って第6シードでプレーオフに進出します。このシーズンはカーライル色全開なチームで、バレア、デロン・ウィリアムズ、デビン・ハリス、レイモンド・フェルトンらのスモールガードを二人、もしくは三人同時起用したり、パウエル、メジリ、パチュリアというなかなか癖のあるビッグマンを使い分けたりと、ほかのコーチだったらお手上げ状態になりそうなロスターを上手く使いこなしていました。改めて自分がカーライルのバスケが好きなんだな、と感じたシーズンでした。

 

 

2016-18  暗黒期

f:id:forever41:20210618181529j:plain

 ハリソン・バーンズ時代とも呼べるこの時代。開幕直後から大きな連敗を喫し、そのままの流れで負け越しが続いたこの2シーズン。 しかしこんなどん底なシーズンでも、セス・カリー、ドリアン、ヨギ、クリバーなど誰も目を付けない選手に役割を与えて活躍させていました。これはどちらかというとGMの手腕に見えますが、エリス、デロン、バレア、セスなど、マブスで活躍するプレーヤーが攻撃的なガードに多いことは、カーライルが彼らのような選手を使いこなすのが抜群に上手いからと言っていいのではないでしょうか。

2018-21  ドンチッチ時代

f:id:forever41:20210618181656j:plain

 2018年ドラフトでマブスはユーロの至宝でありNBAの未来であるルカ・ドンチッチを獲得。シーズン開幕からオールスターまではメインボールハンドラーではあるものの、まだデニス・スミスJrやバーンズらとボールシェアをしていたドンチッチ。しかしトレードデッドラインでの主力の大量放出により、それ以降のシーズンのマブスはスタメンはドンチッチ一人がハンドラーの超ドンチッチ中心のチームとなっていきます。今までカーライルの十八番だったダブルハンドラー体制が崩れたことで、この辺から「これは本当にカーライルがやりたいバスケじゃないんだろうなー」と思っていました。そういう意味ではバレア+ハリスや、JB+セスなど、むしろベンチユニットのほうがカーライル色が出ていて、スタメンとはオフェンスのリズムを変えるという点でもいい使い分けだったんじゃないかと思います。

 

f:id:forever41:20210618181945j:plain

 個人的なカーライルの思い出を振り返ってきましたが、個人的にはプレーオフ敗退後、チームを向上するためにはカーライルかポルジンギス、どちらかを変える必要があると考えていました。正直ドンチッチ中心になってから、カーライルの本来の良さが出ていない感じもしたので、辞めるのは時間の問題だと思っていたのです。ですから本来ならばこの交代は寂しいけれどするべき決断と捉えるべきものでした。しかし最近の情報筋によって明かされたマブス内のゴタゴタ、前日のGMドニーネルソンの解任を考えると、カーライルの辞任はどうしても「前向きなお別れ」ではなく「沈みゆく船からの脱出」のように見えてきてしまいます。今はなかなかポジティブな気持ちになりにくい決別になってしまいましたが、数年後に「あの決断はマブスにとって正しかった」と言えるように願うばかりです。 

 

 最後に、カーライルのチームへの貢献は我々の目に見えない所にもあったようです。長年マブスの実況をつとめるマーク・フォローウィルは今朝こんなツイートをしました。

 このツイートによると、カーライルは他のチームではやらないような、マブスの放送関係者のためにシュートアラウンドを開いたり、アウェーではフォローウィルや実況解説のチャック・クーパースタインたちと共に食事をして、現役時代の思い出話を語ったりするなど、僕たちの見えない所で選手だけでなくマブスの関係者たちと良好な関係を気づいていたのがカーライルでした。我々ファンはコート上で起こることだけでしか、そのコーチの善し悪しを判断できませんが、このようなオフコートでの貢献などを考えると、コーチの評価というのは改めて難しいなと感じます。

 僕らマブスファンはツイッター上ではカーライルに対して文句は言うこともありましたし、イライラさせられることもありました。カーライルの退任はチームが更に上を目指すうえでポジティブな変化だと捉えるべきでしょう。しかしノビツキーの時代からドンチッチ時代まで、目まぐるしく変わる現代NBAの中で、13年間もの間コーチを続けられたのは、彼の対応力とキューバンとの信頼関係があったからに他ならず、最大限に評価されるべきだと思います。オンコート・オフコート共にどれだけマブスに貢献してきたかは計り知れません。戦術家で、頑固で、しかめ面で、娘とノリノリでダンスしちゃったりして、たまに笑うと見てるこっちが嬉しくなる、そんな愛すべきハゲ、リック・カーライル。

 

13年間本当にお疲れさまでした。次にマブスとやるときは手加減してね。

 

f:id:forever41:20210618170456j:plain

 

行く手を阻む者 ~DALvsLAC Game3~

 

f:id:forever41:20210530234013j:plain
  第3戦の1Q、マブスファンは熱狂していました。8-0のランから始まり、最大19点差をつける最高の立ち上がり。正直この試合、そしてこのシリーズの勝利を確信していた人もいたのではないでしょうか。気の早いマブスファンの人の中には、「正直ジャズさんだとポルジンギスカモられるからグリズリーズ勝ってくれないかなー」と早くもセカンドラウンドについて思いをはせる人もいたはず。かくいう僕もその一人です。しかし結果は10点差の敗北。序盤の展開から一転どうしてこうなったのか。2-1でリードしているもののこれからの展開に暗雲が漂うことになった第3戦をみていきましょう。

 ドンチッチにやられまくったズバッチを早々に下げ、早くもスモールラインナップにしたクリッパーズ。それに加えて更なる修正がありました。ドンチッチがひたすらミスマッチを狙い、それに対してホイホイとスイッチしていたクリッパーズでしたが、この試合では徹底してショーディフェンスを行い、スイッチを避けるようになってきました。いままでは楽なディフェンダーから得点を重ねていたドンチッチですが、そうはいかなくなったわけです。また困ったのはドンチッチだけでなく他も同じで、この試合スリーこそ4/6で決めていますがそれ以外のシュートは0/8。他の選手の突破力の低さが露呈してしまう結果になりました。

 スモールになって当然こちらに有利にはたらくのは身長差ですがご存じの通りこの試合ではそれを活かすべきKPが全く攻めきれませんでした。正直この傾向はレギュラーシーズンから続く課題であり、大きなビッグマンよりもフットワークのあるウィングに付かれる方が、KP的には苦手なんですよねー。まあそうは言ってもこの試合のKPは酷過ぎました。その悪い流れがさらにディフェンス面でも響いてしまったのが良くなかったですね。LAでの2戦で相手の弱点を徹底的につくことで勝利したマブス。そこで弱点を変えてきたクリッパーズに対してKPがそれを突けなかった。そんな試合でした。

 この試合の終盤はまるで第1,2戦の裏返しのような展開になりました。あまりに止められないカワイに対してしびれを切らしたマブスダブルチームを仕掛け、そこからのモリスの連続スリーでとどめを刺されてしまったマブス。このシリーズ不調だったモリスを目覚めさせてしまったのは、戦力面+メンタル面でもマブスにとって不利になっていくので本当に厄介ですね。

試合を重ねるごとに成長していくドンチッチ。もはやこれ以上はないんじゃないかと思えた前戦でしたが、第3戦はそれを上回ってきました。ですが同時に彼にかかる比重もそれと比例するかのように上がってきています。ここでこのシリーズが始まる前の予想を思い出してみましょう。「クリッパーズの方がタレントが豊富だからクリッパーズが有利」、そんな予想通りの展開についになってしまったような第3戦。カワイ・ポジョに一応負担が分散されているクリッパーズに対して、「ドンチッチだけ」になってしまったマブス。第3戦後には肩の痛みを訴えるなど、体への負担の大きさが表れてきているドンチッチ。まともに戦っていけば勝負が長引くごとにマブス不利になっていくように感じてしまいました。

 ドンチッチがいない時間をどうしのぐかがますます大事になってくる今後の試合ですが、注目点としては、このままゲームプランを変えないのか、それともオフェンスで上回ることを目指すのか、です。昨シーズンのプレーオフは選手不足から今プレーオフでは出番のないボバンやバークを長い時間起用していたマブス。これらの選手をドンチッチがいない時間帯のオフェンス力の補強として起用する案はあるかもしれません。今まで全く使わなかった選手をこの大舞台で起用できるか、ここからは「信じれるか」の勝負です。

 もうマブスにできることは「選手を信じ続けることができるか」に掛かっているよう思えます。「クリバー・ドリアンにずっとディフェンスを任し続けられるか」「KPはミスマッチを突いて攻めることができるか」、今日の試合を見る限りでは不安な要素が次の試合で本当にいい方向にむかうのでしょうか。まだこちらがリードしているのは変わらないのに、非常に不安な気持ちになってしまう試合でした。


www.youtube.com