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とあるマブスファンが優勝のために考察するブログ

2023-24前半戦振り返り:ルカイリー体制本格始動

 

 

 こんにちはTKです。気づけばマブスの今シーズンの半分を過ぎてしまいました。今年はルカイリー体制でシーズンを始められる初めてのシーズンであり、それに伴って大きな変化も見られました。そこで今回はこれまでの戦いぶりを振り返り、大変恐縮ながら最後に改善案を提案したいと思います。

※スタッツは特別な記載がない限り2024/1/22時点のものです。

 

1章:全体の傾向

2022-23→2023-24

OFFrtg:115.9(6位)→117.5(8位)

DFFrtg:116.1(25位)→116.5(20位)

 数字だけ見るとOFFは改善、DFFはほぼ現状維持って感じですね。なんですが、今シーズンはリーグ全体のOFFrtgが1.0近く上がっているので、リーグ全体の順位的にはそれが逆転しているという不思議なことが起こっています。

 

2章:オフェンスについて

2.1:ペースアップの成功

始めに注目すべきは、オフェンスでのペースアップです。

ペース:97.21(28位)→100.81(9位)

速攻からの得点数:17.7(28位)→23.0(10位)

速攻からの得点効率:1.11(23位)→1.20(4位)

ペースのランキングでここまで高い順位に来るのはドンチッチデビュー以来初。昨シーズンのカイリートレード後から少しずつあったこの傾向が、今シーズンはチームに浸透しつつあります。

 また、得点効率においても注目すべき変化があります。トランジションオフェンスの効率1.11から1.20への向上は、リーグ内で4位にランクインするまでに至りました。このペースアップによる変化は今シーズンのオフェンスの一番重要な要素となっています。むしろ得点効率的にはもっとポゼッションを増やしてもいえるような立派な成績です。

 この成功の理由は、トランジションに向いている選手たちが多く在籍していることにあります。カイリー、エグザム、ハーディなど、ボールをプッシュできる選手や、ランニングする選手としてグリーン、THJ、DJJ、ライブリーなどが挙げられます。

 ルカ・カイリーといった強力なハンドラーが二人もいることから、ハーフコートでは重たい展開になりがちな中、オープンコートで戦う時間を増やすことで、試合トータルでのオフェンス力を底上げする効果的な戦略となっています。これをシーズン半分経過しても継続できているのは、ひょっとするとキッドの最大にして唯一の功績かもしれません。

 

2.2:チームと逆行するドンチッチの特性

 

 じゃあそんなチームにおいて我らが大将・ドンチッチがどのような影響を与えているのでしょうか。彼のon-off時のアシスト率とペースの変化を見てみましょう。

AST%:ON→55.6% OFF→65.6%

ペース:ON→101.02 OFF→103.07    

驚くべきことに、ルカがいる時のチームのアシスト率は約10%近くも下がり、ペースも大きく落ちていることが明らかになりました。これは今シーズンのオフェンスの傾向とは逆行するものであり、マブスにおける新たな課題と言えるでしょう。ただ、ルカはルカで、昨シーズンより自分でリバウンドを取ってからのアウトレットパスを意識して増やしているように見えるので、一概に彼がペースアップに適応していないわけではありません。

 また、ルカのon-off時のネットレーティングの差が去年よりも少ないことも注目すべきポイントです。

2022-23:+5.5 → 2023-24:+1.7

これは今シーズンはルカに依存しなくても、チームがプレーを構築できていることを示しています。

 比較として挙げたいのが、ヨキッチの例です。ヨキッチは+18.5のネットレーティングを誇りながら、プレータイムは33.5分です。いるのといないのでこれだけ影響力が変わる選手を、これだけのプレータイムで抑えながら勝てているということで、ナゲッツの方が長い戦いを見据えた戦い方ができていると言えるでしょう。

 

提案①: ルカの出場時間を調整しよう

 この情報から導かれる提案として、ルカの出場時間を今より抑えることが挙げられます。目安としては33.5~35分とし、チーム全体のバランスを保ちながらも、ルカによる依存を軽減し、長期的な戦いに備えた戦略的なプレーを目指したいところですね。

2.3:摩訶不思議なドンチッチのシュート効率

 この流れだとルカがこのチームに悪影響しか与えない存在みたいになってきているので、そもそもルカ・ドンチッチとはどういう選手かというのを、同じくリーグトップクラスのPGであるカイリーと比較しながら見ていきましょう。

2人のシュート効率(eFG%)をドリブル数別にまとめたものがこちらです。

カイリーはドリブルなしのシュートの割合も割と多めですね。確率に関しては、ドリブル数と成功率が反比例する、いわば優等生なスタッツです。

 それに対してドンチッチはなんともいびつな数字をしています。一番成功率が高いのがドリブルなしなのは同じとして、次に確率が高いのがドリブルを3~6回もついてからのシュートというのは驚き。そしてこのeFGですが、61.2%と、なんとリーグ1位の効率の良さ。しかもダントツの、です。正直僕は常々、ドンチッチが長くボールを持つたびに「うーん」となっていましたが、長く持つことでここまで効率が良いシュートを打てているのなら話は別。彼自身のリズムを作ることの重要性を考えれば、寧ろ推奨すべきでしょう。

2.4 プレー選択の比率を考えよう

 そんな異次元なルカですが、彼に注文を付けるとしたらプレー選択の比率を改善してほしい、ということです。下のグラフはドンチッチのアイソレーションとピック&ロールのハンドラーの得点数の比較です。

 これを見ると、年々アイソレーションが増え、ピック&ロールの割合が減っていることが分かります。これはキッドになってから、スモールセンターを起用した5outが増え、インサイドのスペースを空けてハンドラーのアイソアタックをメインにする傾向が強まったからでしょう。ただ個人的には以下の理由からアイソをメインのオフェンス戦術に据えるべきではないと考えています。

 

①上振れ値が少ないオフェンスである

 ドンチッチのアイソは単体で見れば期待値の高いオフェンスではありますが、一方でそれ以外のイージーシュートが生まれにくいのも事実。あるとしたらヘルプに来た際のオープンスリーくらいか。一方ピック&ロールだと、そこにロールマンのアリウープの選択肢が増えます。全盛期ウォリアーズだったらカリーが動きまくっているだけで、勝手にオープンなゴール下が生まれたりと、メインに狙いたいプレーから派生して、サブのイージーシュートが期待できます。上振れの要素が少ないオフェンスを今のマブスが選択すべきかは疑問です。

 

②上振れの無さをディフェンスでカバーできない

 ①を語るうえで重要なのは、マブスはディフェンスがいいチームではないということです。ディフェンスで安定感をもたらせるチームであるのならば、オフェンスに上振れ値を見出す必要性は薄くなります。しかしマブスはそうではありません。だからこそ「ドンチッチの調子の悪い試合は負け」という現状の単純かつ不健全な構造を崩すために、アイソレーションへの依存度を下げるべきだと考えます。

 

③特定の選手への負担が大きすぎて、長期戦に向かない

 ハンドラーだけに負担が偏って周りは棒立ち、という展開になりがちで、選手に蓄積する疲労のバランスが良くない。結果として一番個の打開力が求められるPOでドンチッチ本来の力を維持できず、長く勝ち上がることができない、という展開が目に浮かびます。

 

④ドンチッチが実力を過信しすぎる

 アイソアタックの期待値を上げる最も一般的な手段としては、相手の弱いディフェンダーへスイッチさせることがありますが、ドンチッチはそれすら狙わず無策にアイソを仕掛ける時が無視できないくらいにはあります。アイソをメインにオフェンスを組み立てるということは、それだけ彼の無秩序なシュートが生まれるということで、安定感はなくなります。

提案②:ドンチッチのピック&ロールの割合を増やそう

ということで、アイソとピック&ロールに関しては、最低でもカーライル時代位の割合に戻してほしいという気持ちです。そう言いたくなるのはライブリーの存在です。ここまでサイズとアスレチック能力と献身性を兼ね備えたビッグマンはドンチッチデビュー以来初です。彼の出場時間は明白であり、その時間を有効活用するためにも、ライブリーとのピック&ロールはもっともっとしつこくやって欲しいと思います。

 

3章:ディフェンスについて

 

続いてディフェンス。これについては上手くいっていない原因は明確です。

・制限エリア内の被FG%:70.8%(29位)

・被ペイント内得点:53.3(23位)

・被速攻得点:16.6(28位)    ※2024/1/23時点

 一番優先的に守るべきペイントエリアが一番守れていないんだから、そりゃディフェンスもダメですよねって話です。

 ここで重要なのが、相手に打たせるシュートに対する整理です。基本オフェンス有利な現代NBAにおいて、ディフェンスする際にどのシュートなら打たせて良くて、どのシュートは打たせちゃいけないかの取捨選択が重要です。マブスがこれをできているのか見てみましょう。

opponent shootingをエリア別で割合を示したもの。赤→多 緑→少

これはディフェンスにおいてどのエリアでシュートを打たれているかを色分けして示したものです。ディフェンス1位のウルブズや2位のセルティックスは優先すべきゴール下やコーナースリーをきっちり打たれないようにしています。流石ですね。

 じゃあマブスはどうかというと、全体的に色が薄いですね。これはすなわち取捨選択ができていない証拠だと思います。実は似たような分布だとディフェンス5位のマジックがいるのですが、マジックはもともとディフェンスに寄った人材を多く集めているので成立しているんじゃないかと予想しています。対するマブスはそうではありません。ならば理想は捨て、せめてこの取捨選択をハッキリするところから始めるべきではないでしょうか。

 また、試合を見ていると、相手のハンティングに対するスイッチの有無や速攻に対するセーフティの位置取りなどの細かな整理ができていないように感じます。上記の取捨選択にしてもそうですが、総じてディフェンス全体の整理がチームとしてできているようには思えません。

提案③:打たせるシュートの取捨選択をハッキリさせよう

 

3.2:スモールセンターへの固執(n回目)

次は個々のDFFrtgを見ていきましょう。DFFrtgのon-offの差が一番特に大きいのがこの3人

ルカ:5.0 グラント:6.1 THJ:6.5

 ルカとTHJはシンプルな努力不足が目立つし、ボールサイドに寄り過ぎてオフボールディフェンスで何も見てない場面が多すぎます。僕がTHJがどんなにオフェンスで活躍しようが絶対にトレードすべきだと思う理由はこれ。オフボールでマークマン見失う人が二人もいるチームでは絶対にディフェンスの向上は望めません。

 グラントのディフェンスにおける問題は、スモールボールでのセンター起用が一番の問題の原因でしょう。グラントのディフェンスにおける特徴については、下のツイートを見ていただきたいです。

 

 要は短い時間なら相手センターにもマッチアップできるが、試合通してセンター起用するのがダメだということです。彼自身がリバウンドにとりわけ強い選手ではないので、センター起用するなら、周りにサイズのあるウィングを複数人揃えないとダメだと思ています。そうでなければきちんとセンターの横に並べるべきでしょう。現にNETrtgで見ると散々なグラントですが、ライブリー、ホームズと同時起用されているときはプラスになっています。

 また、マブスのスモールの何がダメって、センターが小さいだけならまだしも、周りのウィング陣とガード含めて小さいということマブスの選手のサイズ見れば一目瞭然なんですが、メインでローテに入ってるメンバーの中で6-7から6-9のサイズがあるウィングがいないんですよね。ロスターにはOMAXがいるけど使われないし。その割にやることはドンチッチのアイソ主体でガード同士の絡みが少ないから、スモールであるメリットが全く見いだせていません。グラントのレーティングを見ても分かるように、明確に数字として失敗しているんだから、少なくとももっと短い時間に留めるべきでしょう。センターのローテーションに関しては、ライブリー30分+パウエル18分で、相手によってはグラントが数分。こんな感じでどうでしょうか。(現実はクリバーセンターでパウエルは干される)

提案④:グラントはセンターと併用しよう

 

 

4章:選手起用について

4.1:定まらないローテーション

※2024/1/23時点


 ここからは選手起用について深掘りしていきましょう。今シーズンのマブスは同じ5人のラインナップで、100分以上出場しているものが未だにありません。一番多いラインナップがギリギリ100分くらいですが、その下のラインナップを見るとまばらに見えます。確かに怪我人が多いシーズンではありますが、主力が2人も離脱したキャブスや途中で大きくスタメンを変えたジャズもこの条件をクリアしていることを考えると、言い訳できない感じはします。不安定なローテーションは、どの組み合わせが一番相乗効果があるかをシーズン半分通して見出せていないのは、不安定なチーム状況の一因になっていると思います。

4.2:ルカ・カイリー相性表

 リーグトップクラスのガードを2人も抱えているので、周りの選手たちは彼らの志向するオフェンスとの相性の良さがカギになってきます。下の表はカイリーとルカ、どっちといる時の方がNETRTGが高いかを比べたもので、どのような特徴を持つ選手が相性がいいのかが見えてきます。

 ほとんど数字に違いはないグラントとライブリー、そもそものNETrtgが高すぎるエグザムは相性の差はあまりないように見えます。

 ルカとの相性がいいのはDJJですね。DJJはルカのドライブ→キックアウトしてからのスリーorカウンタードライブが主な得点源であり、またルカが高めの位置でダブルチームを仕掛けられた際の中継役となり、4 vs3の状況で果敢にドライブからねじ込める力強さもあります。半面、ズレのない所からプレーを作るのは苦手なので、満遍なくパスを捌くカイリーより、ズレをしっかり作ってからパスをくれるルカの方が相性がいいのでしょう。

 一方カイリーの方が相性のいい選手はTHJ、グリーン、ハーディ、パウエルですね。THJ、グリーン、ハーディは早い展開に持っていけるカイリーといる時の方がリズム良くシュートまで持ち込めているように思えます。グリーンとハーディはある程度ボールを持ってからの判断力があるため、ドンチッチと比べてよりボールを散らしてくれるカイリーといる時間の方がボールを自由に扱う時間が多いです。また、一番レーティングに差が大きいパウエルですが、これはカイリーとのパス交換の多さにあると思います。

ルカ欠場中の試合では、トップのパウエルにボールを預けてから、THJとカイリーのオフボールスクリーンからカッティングやオープンスリーを狙うプレーもありました。

こうしてみると全体の傾向として、周りの選手の判断力をより信頼したプレー選択が多いです。

 

提案⑤:ルカイリーとの相性を見極めたラインナップ起用を増やそう

 これらを踏まえて、ルカ・カイリーと相性のいいラインナップを考えると、

ルカ

スポットアップのフィニッシュ力重視かつディフェンシブなラインナップ

カイリー

判断力に優れた複数人とボールをシェアする、アップテンポなラインナップ

このようになると思います。後はこのように相性のいいラインナップを増やすためのコーチ陣のプレータイムの管理がカギになってきそうですね。頑張れキッド(白目)。

 

5章:まとめ

提案①: ルカの出場時間の調整

提案②:ドンチッチのピック&ロールの割合を増やそう

提案③:打たせるシュートの取捨選択をハッキリさせよう

提案④:グラントはセンターと併用しよう

提案⑤:ルカイリーとの相性を見極めたラインナップ起用を増やそう