「ディフェンスの良い選手」の定義って何?
・個人のディフェンス力はチーム次第
しょっちゅう思うのですが、選手個人のディフェンス力ってチーム次第みたいなとこあると思うんですよね。例えばジャズとかは、ゴール下のゴベアのリムプロテクト力を活かすために、ウィングディフェンダーが抜かせ気味に守る時がありますが、そんな感じだとウィングの選手のディフェンス力が分からなくなったりします。個人的にリーグのベストディフェンダーはマーカス・スマートだと思うのですが、それはセルティックスの多彩なディフェンス戦略によって活かされている部分も大きいと思います。
Marcus Smart Defense Highlights 2018/19 NBA Regular Season Part 1
スマートの試合で印象に残っているのは今シーズンのマブス戦です。
Marcus Smart Defensive Highlights vs Kristaps Porzingis and Luka Doncić (11/11/2019)
この試合ではセルティックスはスイッチを多用していたので、ポルジンギスをマークすることも多かったスマートですが、全く押し込まれずに守り切っています。このようにスイッチを多用するチームにおいては、ビッグマンよりウィングディフェンダーの能力の方が重要視されているような気がします。
・数字から見るジャレット・アレンとデアンドレ・ジョーダンのディフェンス力の違い
アトキンソンの解雇の一因にもなったといわれている二人の起用法ですが、実際にはどっちの方がいい選手なのでしょうか。昨シーズン、マブスでジョーダンを見ていて、全盛期のようなリムプロテクト力はなくなってしまっているように感じています。なので印象としては全然アレンの方がいい選手に思えるし、若いアレンを差し置いてジョーダンを先発させるのは普通に考えたら意味不明です。ただ、面白いことにディフェンスのスタッツだけ見ていくと二人の違いってなかなか分かりにくいんですよね
‣二人のDIFF%(どれだけ相手のシュート確率を下げたか)
ジョーダン -6.3%
アレン -3.2%
こう見ると数字的にはむしろジョーダンの方が抑えています。不思議ですね、印象と違います。でも僕は「おいおいそんなことないだろ」と思ってしまいます。去年一年はジョーダンのひどいディフェンスにイライラしてたんで。そこで、どれだけ相手のシュートにチェックしにいっているかの数字を調べてみました。
‣二人の平均シュートチェック数
ジョーダン 7.8本
アレン 14.4本
するとこの数字には大きな差がありました。ここから分かることは、ジョーダンはチェックにいった時は効果的だが、そもそもチェックに行く回数が少ない、ということです。ですからこれでようやく、アレンの方がリムプロテクト力において優れている、と言えるでしょう。たぶん。
・ディフェンスは基準がわかりにくい
今回言いたかったのはアレンの方がいい選手だ、ということではなく、ディフェンス力をスタッツで測る場合、複数の数字を見ないと分かりにくい、ということです。例えばスリーの上手い選手は確率を見れば一発です。ディフェンス力はそういう一発で分かる指標がないから、人によって評価が分かれることがありますよね。
マーカス・モリスなんかそんな選手の一例ではないでしょうか。2年前のカンファレンス・ファイナルが始まる前にモリスが「俺はレブロンを止められる」的なことを豪語していて、実際かなり抑えていた場面もありました。しかし試合解説やポッドキャストなんかを聞いていると大体モリスのディフェンスについては良くないことばかり聞きます。ディフェンスについての絶対的な指標がないから、このようなことが起こるのかな、と思います。
最後にスタッツを調べていたときに、見つけて驚いたものがありました。昨シーズン、ディフェンスの良い選手のDIFF%を調べていたときにカワイ・レナードのDIFF%を検索しました。すると
‣18-19シーズンのカワイのDIFF%:-0.1%
なんと数字だけみたら並にしか守れていないのです。スリーのDIFFだけに絞ったら+3.2とむしろ平均以上に相手に決められているのです。ところが今シーズンのDIFFは-6.2、スリーだけなら-10.5とDPOYにふさわしい数字になっています。この違いはラプターズとクリッパーズのディフェンス戦略の違いなのかなんなのか。やっぱり個人のディフェンス力をスタッツではかろうとするのは難しいですね。